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てんぐ巣病

公開日:2020.8.20 更新日: 2021.5.25

罹病した茎の側芽が発芽して多数の細い枝を密生させるため、その部位が箒や鳥の巣様になる植物病をてんぐ巣病という。

樹木がこの病気にかかると、鳥の巣が懸かったように見え、この異形を天狗の巣に見立て、てんぐ巣の名が付いた。英名では魔女の箒という。野菜や草花のてんぐ巣では葉が黄化して株全体が萎縮し、葉柄の短い小葉が株元や茎から多数発生する。病原は数種の菌類とファイトプラズマである。

菌類の寄生によって発症する樹木にはサクラ、シラカンバ、ダケカンバ、マツ、ヒノキ、ヒバ、オオシラビソ、アスナロ、ツツジ、サツキ、タケ類のマダケやハチクなどがある。
ファイトプラズマの寄生では、キリ、ナツメ、草本類のリンドウ、ミツバ、スターチス、サツマイモ、ダイズ、ジャガイモ、シュンギクなど多種で発症する。

てんぐ巣の発現は枝や茎の頂芽優勢の消失に起因する。正常な茎は頂芽から出るオーキシンが側芽の発芽を抑えている。てんぐ巣病菌はサイトカイニンを生合成することで、オーキシンに拮抗するサイトカイニンの量を増加させて、側芽の発芽抑制を解除して、てんぐ巣症状を発現させる。

ファイトプラズマでは、病原体から分泌されるペプチド性因子が側芽の細胞へ移行して、オーキシン反応経路を直接に抑制するためとされる。

治療は菌類での発病なら外科手術の除去だが、ファイトプラズマでは焼却しかない。

 

『農耕と園藝』2012年10月号より転載

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