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圃場を渡る、舟を編む

公開日:2020.10.6

こんにちは、づみたんです。

待ち遠しかった秋到来!

ということで、やっと食欲の秋・読書の秋・園芸の秋を楽しめる季節が訪れましたね。

建物の外から一歩出れば、キンモクセイのよい香りが漂っていて、とってもしあわせな気持ちになります。

室内にいるのもマスクをするのも、もったいなく感じてしまいますが、次なるシーズンは新型コロナウイルスだけでなくインフルエンザも流行する時期に。油断は大敵ということで、より一層気を引き締めて生活する日々です。

 

さて、そんな本日は「言葉を編む」話でも。

今秋、一冊の本が完成しました。

その名も『農業用語の基礎知識』。

本書は雑誌『農耕と園藝』やonlineの『カルチべ』でもお馴染みの長期連載、「なるほど園芸用語」(2013年1月号から2020年秋号現在)と「誌上辞典」(1967年1月号~2012年12月号)に加筆修正を加え再編集した、生産者に向けた営農・園芸用語解説集です。

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【目次抜粋】
・本書の特色
第1章     植物生理・生態
第2章     植物形態
第3章     遺伝・育種
第4章     病理・昆虫・微生物
第5章     園芸技術Ⅰ 栽培管理
     土壌・培地、生育、開花・結実、繁殖・育苗
第6章     園芸技術Ⅱ 施設・環境調節・気象
第7章     園芸技術Ⅲ 化学調節・農薬
第8章     園芸技術Ⅳ 利用・貯蔵・品質
・参考文献
・付録図
 花の構造/舌状花と筒状花の構造/葉の構造/複葉の種類/樹形の種類と主な樹種
・あとがき
・植物名索引
・索引

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1967年というと、連載開始から今年で53年目。

さらに本誌には未掲載(今後順次掲載予定)の原稿を含めると、およそ55年分の汗と涙とその他諸々の結晶がこの一冊に詰まっていることになります。まさに著者である藤重宣昭先生の研究者「人生」そのもの。

半世紀の重みを感じますよね。

制作は50年分の『農耕と園藝』(合本)から該当ページを探し出しスキャンする所から開始。その後、一項目ずつ文字打ちしてデータを起こし、カテゴリー毎に分類。技術情報のアップデートなど校正・校閲を繰り返しました。
束幅34㎜、頁数592ページと特大のボリューム感です。

構成は「植物生理・生態」、「植物形態」、「遺伝・育種」、「病理・昆虫・微生物」、「園芸技術」と5つのカテゴリーに分類した農業用語を一語ずつ解説しています。

「園芸技術」の項目については、さらに「栽培管理」、「施設・環境調節・気象」、「化学調整・農薬」、「利用・貯蔵・品質」と4つに細分化して紹介。

詳細な一つひとつの用語解説は、読み進めるうちに関連する周辺知識も自ずと身につく、という画期的な内容にまとまっています(自画自賛)。

(自画自賛、と言っておりますが、すべては『農耕と園藝』でも非常に長くお世話になっている超敏腕ライター戸村悦子さんのおかげです…!)

また、テーマ毎の分類とは別に五十音順の索引、栽培品目による逆引きが可能など、使いやすさにこだわった仕様となっているんですってよ、奥さん!

著者である藤重先生が執筆を始めたのは、東京大学大学院に在学中、修士課程2年次のこと。当時24歳だった先生は、その後宇都宮大学で助手や教授を務めるようになってからも引き続き毎月原稿を書き続けました。

この仕事を引き受けた頃には、50年以上も連載を続けることになるなんて夢にも思っていなかったそうです。

本企画の打ち合わせの際、宇都宮名物の餃子をおいしそうに味わいながら、連載のこれまでの歩みを語って下さった先生の活力に充ち満ちた嬉しそうな表情が今でも忘れられません。

そう、宇都宮名物の餃子……

この業界に身を置いているとわかるのですが、農園芸界のみなさまは、どなたもとってもお元気です。

バイタリティーに満ち溢れているというか、純粋に好きなことを追求していることから来るエネルギーや、そのための規則正しい生活から成る健康的な笑顔、もしかするとその両方かもしれませんが、とにかくみなさま若々しくいらっしゃいます。

もちろん藤重先生も、大学教授を退官したあとも変わらず、日夜開発や研究に励んでいらっしゃるとのこと。

そんな先生に、ぜひとも完成した新刊『農業用語の基礎知識』をお届けしたい!

 

ということで、いってきました宇都宮。

餃子アゲイン。

念のためお伝えしておきますが、決して餃子が食べたくて宇都宮に馳せ参じたわけではありません。

ええ、断じてそのようなことはないのです。

でもおいしかったですよ! 宇都宮の餃子。

ああ、浜松の方、お気を悪くなさらずに!

この本の制作が正式に決定したのは約一年前のことでした。

まだまだ右も左もわからない編集者の私が本書を担当・刊行させていただくことになるまでには、ここには書ききれないくらい、山あり谷ありの日々が続きました(今でも右と左くらいしかわからない)。

どんな本も数えきれないほどのたくさんの人に支えられて、ようやく世に出るわけですが、この本も非常に多くの方々に助けていただき完成しました。

制作途中、それはもう何度も頭の中を某小説「*舟を編む」が過りました。

*【舟を編む】……三浦しをんによる日本の小説(光文社)。「玄武書房」に勤める編集部員・馬締光也が、新しく刊行する辞書『大渡海』の編纂メンバーとして辞書編集部に迎えられ、個性豊かな編纂者たちが辞書の世界に没頭していく姿を描いた作品。「辞書は言葉の海を渡る舟、編集者はその海を渡る舟を編んでいく」という意味でこの書名が付いている(Wikipediaより)。

「辞書は言葉の海を渡る舟、編集者はその海を渡る舟を編んでいく」改め、本書は「農業用語は生産者が圃場を渡る舟、編集者はその圃場を渡る舟を編んでいく」といったところでしょうか。

著者・藤重宣昭先生と『農業用語の基礎知識』。

そんな、約半世紀分の知力と想いが詰まった舟は、農業および園芸に関する基礎用語、全627項目について簡潔な文体でわかりやすく解説しています。農業経営者はもちろん、農業に興味のある方やアマチュア園芸家にも役立つ情報が満載。

本書が営農のスキルアップに役立ち、農業・園芸技術への理解が深まる「舟」となれれば幸いです。

ちなみに関東七名城の一つ「宇都宮城 本丸跡」の周りも散策してみました。味のある観光地は地元の人に聞くと「行ったことない…」と言われ、己で道のりを開拓するまでがセットですよね! 土塁の高さが圧巻でした!

それでは、また次回お会いしましょう!

編集部のづみたんでした。

 

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