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カルチべ取材班 現場参上

カルチべ取材班、野菜・花き種苗改善審査会へゆく⑩「ビオラの部」を知りたい!

公開日:2020.12.9

本日のカルチベ取材班は、本誌『農耕と園藝』でもおなじみの東京都種苗会主催、「野菜・花き種苗改善審査会」に参加するため、東京都農林総合研究センターに現場参上しました!

今回の審査品目であるビオラ(スミレ科)は、秋から冬にかけての需要が高く、各種苗会社から様々な種類の品種が発売されています。

花色は淡い優しい色から濃いはっきりした色まで多様で、かつては小輪・多花の品種が多い傾向にありましたが、最近は花数が少ないものの大輪で存在感のある花を有する品種も作出されています。

本審査会では、ビオラ19品種(うち参考3品種)、8月上旬播種・10月下旬出荷の作型における種苗改善審査を行いました。早速、審査の様子や取り組みなどを中心にお届けします。

ビオラの生育経過

出品点数は19点。

詳しい栽培概要は、以下の通りです。

栽培概要

播種・鉢上げ・追肥

2020年8月7日の市販播種用土(商品名:TM-2)を充填した406穴セルトレイ(半分に切断し各203穴)に19品種を播種し(2反復)、9月7日の展開葉が2~4枚時に3.5号黒ポリ鉢へ鉢上げしました。

赤土:腐葉土:ピートモス=5:3:2(容積比)を使用し、基肥として用土100L当たりN:58g、P25:158g、K2O:54gを被覆肥料、過リン酸石灰で施用しました。

追肥は粒状肥料(商品名:9月25日にオスモコートエグザイト1g/鉢、10月6日に化成8号1g/鉢)を施用しました。

温度処理

発芽処理は20℃のインキュベータ内で行い、芽が確認できた時点でガラス温室へ移動しました。

育苗および鉢上げ後活着するまではガラス温室内で管理し、側窓は常時開放しました。

鉢上げから21日後の9月28日に、露地のベンチへ移動させました。

病害虫防除

  • アルバリン粒 1g/鉢
  • バロックFL ×2000
  • ダコニール1000FL ×1000
  • アフェットFL ×2000
  • アファーム乳 ×1000
  • コテツFL ×2000
  • 花華やか顆粒水溶 ×500

その他

萎凋した花に対してのみ摘み取りを行いました。

台風14号上陸の際は一時、ベンチ全体をビニルで被覆しました。

栽培期間中の天候・生育概要

天候概要

気温:9月下旬、10月上旬に台風や前線の影響で平年値を下回る日もありましたが、栽培期間を通して暖かい空気に覆われることが多く、気温は平年値を上回る日が多くありました。

降水量:湿った空気や台風の影響で9月上旬、10月上旬にはまとまった降雨がありましたが、それ以外は降水量が少ない日が続きました。

日照時間:前線や湿った空気の影響で曇りや雨の日、台風の発生時は日照時間が少なかったのですが、期間を通して日照時間が多い日が多くありました(特に8月上旬から9月中旬にかけて)。

生育の概要

早い品種で播種後2日目から発芽が確認されました。

セル育苗後、鉢上げ後ともに、高温の影響でやや徒長ぎみでしたが、生育が停滞することなく順調に進みました。

最も早い品種で第一花開花日が9月24日、遅い品種で10月18日でした。

発芽試験

公定試験(シャーレ)

発芽試験は、種苗読本(日本種苗協会)の発芽試験基準に準じました。

置庄粒数は12cmシャーレ1枚当たり種子50粒の2反復とし、10月1日に播種しました。

日長は明期12h/暗期12hとし、温度条件は20℃一定としました。発芽率調査は播種12日後に行いました。

発芽率は出品番号13番を除き(ただし、セルトレイでは8割近く発芽)おおむね8割を超えました。

審査結果

等級 順位 品種名 会社名 平均値

Ⅰ 1 クイックタイムブルー (株)ミヨシグループ 89.1

Ⅱ 2 クイックタイム ブルーパープルジャンプアップ (株)ミヨシグループ 85.8

Ⅲ 3 フローラルパワー マリーナ タキイ種苗(株)関東支店 85.0

Ⅲ 4 クイックタイム イエローブルージャンプアップ (株)ミヨシグループ 84.7

審査講評

東京都農業振興事務所 菊池正人氏

今回は花数が多く、一株一株の揃いが良いものが選ばれた傾向にあるように思う。

また、草姿の整ったものも数多く見受けられ審査員の方々も苦労されたことと思われる。

今後、本審査会の結果が種苗の改善と向上につながっていくことを期待している。

まとめ―栽培技術の向上と品目の発展を目指して―

以上の結果と講評をもって、審査会は無事終了となりました。

メーカー各社がとっておきの品種を持ち寄る審査会の開催が、様々な野菜・花きの栽培技術向上や品目の発展へとつながっているのですね。

今回の審査会の栽培管理や開催準備については、東京都農林総合研究センター 園芸技術科 花き研究チームの岡澤立夫氏、山本陽平氏が担当されました。本誌で連載が始まった岡澤立夫氏の「花き研究の最前線」も、ぜひご一読を!

それでは、次回の「カルチベ取材班 現場参上」もお楽しみに。

 

 

 

協力/東京都農林総合研究センター立川本場

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