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カルチべ取材班 現場参上

カルチべ取材班、野菜・花き種苗改善審査会へゆく⑫「年内獲りコマツナ(ハウス)の部」を知りたい!

公開日:2021.1.22

去る2020年12月22日(火)、東京都農業総合研究センター江戸川分場にて表題の審査会が行われました。当日の様子をご紹介します。

新型コロナウイルスの感染対策として、今回もセンター玄関前にてソーシャルディスタンスを取りながらの開催挨拶から始まる。

太陽の姿は見られたものの午前中の早い時間には時折、粉雪の舞っていた当日。審査が行われた12月下旬は、正月用品としてコマツナ需要が高まる時期で、この時期の開催は初となります。参加者はどの品種が高く評価されるのか、大きな期待を抱きながら臨みました。

「年内穫りコマツナ(ハウス)の部」の審査会

約30名が参加した審査会がいよいよ始まります。出品点数は22点、内参考出品は3点となりました。

耕種概要

供試圃場 江戸川分場赤土客土UVカットハウス2棟
施肥 10a当たりN、P2O5、K2O、を成分量で各7-5-5kg(全量基肥)
区制 1.75㎡の2連制(1区当たり2.5mの200株±4株)
播種 11月6日
栽培距離 ベッド幅70cm、条間14cm、株間5cmの4条播き(1穴2粒播種)
間引き 11月16日に発芽揃い、11月17日(播種11日後)に出芽調査後、間引き。
温度管理 ハウスの妻面およびサイド面は防虫ネットを展張しました。雨天時および昼夜の気温変化により適宜開閉しました。
潅水 11月6日(播種時)、22日の計2回 
病害虫管理 サイド、出入り口に1mm目合いの防虫ネット

 

播種時 フォース粒剤 4kg/10a
11月17日 プレオフロアブル  1000倍
11月19日 ダイアジノン粒剤5(畝周囲)  2000倍
11月20日 プレバソンフロアブル5  2000倍
11月27日 アニキ乳剤  4000倍
アミスター20フロアブル  2000倍
12月8日 デイアナSC  4000倍
ランマンフロアブル  2000倍
12月13日 スラゴ(畝周囲)

 

生育概要

(1)生育初期(11月第4〜5半旬)は平年より大幅に気温が高く、生育が前進しました。12月に入ると平年より気温が低い日が増え、生育が鈍化しました。

(2)発芽試験は濾紙を敷いたシャーレ内に50粒播種で2反復実施しました。ほとんどの系統で播種6日後には発芽率90%以上でしたが、No.19は播種6日後でも発芽率が81%とやや低い発芽率でした。
一方本圃では、播種後11日目の出芽率調査でNo.19を含む全系統で99%以上出芽しました。

(3)11月中旬に江戸川分場内でハスモンヨトウが多発したことで、当圃場もハウス外からの侵入により、発芽揃い直後の11月17日に子葉の食害を確認しました。その後1週間は粒剤および散布剤による防除を行うとともに、毎日7〜8回見回り、捕殺することで対処しました。その後、気温の低下とともに被害はなくなりました。
被害株は、子葉損失により大幅な生育遅延、または欠株となり、最も被害を受けた系統で約5%の株が食害を受けました。また、12月13日にウスカワマイマイによる食害が見られたため、捕殺後、畝周囲にスラゴを散布しました。

(4)本審査日は、播種日から起算して46日目に当たります。

真剣な眼差しで立毛審査に臨む参加者たち。新型コロナウイルス対策として圃場内やビニルハウス外での移動もあらかじめ一方向に決められており、かつ、ソーシャルディスタンスを守りながら審査は進みます。

ソーシャルディスタンスを守りつつ行われた立毛審査写真。参加者同士のおしゃべりも最低限に抑える。

今回は残念ながらハスモンヨトウがハウス外部から侵入し、多くの被害株が見られましたが、審査対象から除外し、審査が行われました。

今回はハスモンヨトウの被害が発生した。被害株は葉が少なく、スカスカした印象。

立毛審査が終わると収穫作業となります。新型コロナウイルス対策のため審査会は時間短縮で行っており、なるべく早い終了が望まれます。センターのスタッフだけでなく、参加者もすすんで各自協力して作業を手伝う様子が見られました。

立毛審査のあとは収穫物審査に移る。時短での開催のため、速やかに収穫作業が進められた。

速やかな収穫作業ののち、収穫物審査に移りました。きれいに並べられたコマツナ各品種の前で熱の入った眼差しで採点をする審査員たち。

整然と並べられたコマツナの前で収穫物審査が始まる。ハウス内を何度も行き来して、じっくりと見つめて審査する審査員も。

結果発表

冬本来の出荷時期となったコマツナ審査会において、どの品種が選ばれるのでしょうか。参加者が見守るなか、結果発表となりました。順位は以下のとおりです。

審査成績表

等級I(1位)【あっちゃん】雪印種苗株式会社

立毛79.27 収穫物164.82 合計244.09

 

等級II(2位)【No.1012】タキイ種苗株式会社 関東支店

立毛80.27 収穫物162.82 合計243.09

 

等級Ⅲ(3位)【神楽坂】株式会社日本農林社

立毛80.18 収穫物161.27 合計241.45

 

等級Ⅲ(4位)【MKS-G002】みかど協和株式会社)

立毛79.18 収穫物161.91 合計241.09

審査講評

以上の結果について、東京都中央農業改良普及センター・吉田滋実氏より審査講評が述べられました。

「初めて需要の高まる年末にコマツナ審査会を開催でき、大変意義のある内容だったように思います。上位の順位に点数の大差はありませんが、系統により伸長差が大きくなりました。立性、揃いの良さが審査のポイントとなったように思います。
気温の低下により、一部には凍害の萎れが出ました。ただ、ロゼット状になるようなものはありませんでした。
立性で調整しやすいもの、また、冬の寒いなか収穫物を洗うのはなかなか大変なので、細根が少なく土の付着が少ないものが生産者にとって喜ばれます。今回はそうしたものが高い評価を得たと思います。この作型の消費量需要は高いため、今後、新しい品種も出てくると思うのでさらに期待したいです」

以上をもって、審査会は終了となりました。

年明けには1都11県(1月22日現在)に緊急事態宣言が発出されましたが、今後の審査会も今までどおりしっかりとした対策を取り、中止することなく開催していただけることを期待したいと思います。

 

 

資料提供・協力/東京都農林総合研究センター江戸川分場
取材・文/編集部

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