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【野菜】冬至カボチャについて 2020年12月

公開日:2020.12.8 更新日: 2021.5.21

冬至。一年でいちばん昼の時間が短い日。

2020年は12月21日がこの日にあたる。太陽の力が最も弱くなるが、冬至を境に昼の時間が長くなっていくので、昔から太陽が生まれ変わる日「一陽来復」と考えられてきた。

つまり、暦の上では最後の日でもあり最初の日でもある「起点」というわけだ。
そして冬至を境に運も上昇していくと考えられており、運を良くするために「ん」が2つつく食べ物を食べるという習慣が生まれた。

冬至七種(ななくさ)と呼ばれる7つの食材は、
南瓜(なんきん)、人参(にんじん)、蓮根(れんこん)、銀杏(ぎんなん)、金柑(きんかん)、寒天(かんてん)、饂飩(うんどん=うどんのこと)で、なかでもカボチャは「南」という字がつくことから、太陽が「陰(北)」から「陽(南)」に向かう縁起の良い食べ物とされ、冬至の代表として認識されるようになった。

カボチャの旬は夏である。しかし、切らずに風通しの良い涼しい日陰に置いておくと長期保存ができるので、農産物の少ない冬でも食べることができる栄養価の高い野菜として、昔から貯蔵利用されてきた。

食用のカボチャの種類は大きく3系統に分けられる。

水分が多くゴツゴツした見た目の和カボチャと凹凸の少ない西洋カボチャに分けられ、西洋カボチャは、ねっとりとした食感の粘質系とホクホクとした紛質系に分けられる。
粘質系は代表品種の名称で「えびすカボチャ」と呼ばれ、紛質系はその食感から「栗カボチャ」と呼ばれている。

関西では粘質系が好まれてきた。煮物にすると皮が分離しにくいのが粘質系で、給食など業務利用されるカボチャは煮崩れしにくいえびすカボチャ指定の注文が入るほどである。
若い女性や子供には栗カボチャも人気が高く、最近では量販店でも種類を分けて差別化販売する店が増えてきている。

貯蔵に向くのは水分の少ない紛質系で、冬至用に紛質系のカボチャ品種を栽培している産地も多い。

カボチャが冬至の代表的な食物だということで、冬至まで貯蔵して出荷すれば高く売れると思うかもしれないが、グラフを見てわかる通り、12月の単価が特別高いということはない。

また国産のカボチャの入荷が少なくなってくる時期でもあり、それに代わって輸入のカボチャの入荷が増えてくるため、不作の年だからといって高値をつけるということもほとんどない。
貯蔵中に傷みや腐りで出荷できなくなるものもあり、貯蔵のための倉庫代もかかることを考えると決して割が良いとはいい難いが、季節感を演出する量販店の売場作りのニーズに応えるために、いまも毎年冬至に向けた貯蔵出荷は続いている。

カボチャにはエネルギー源となる糖質が多く含まれている他、粘膜や皮膚を強くする働きのあるビタミンAの前駆体であるβ‐カロテンや感染症予防の働きがあるビタミンCも多く含まれているので、風邪の予防にも良いとされてきた。

新型コロナウイルスが猛威をふるっているが、カボチャの持つ栄養価と運気で、コロナ禍で疲弊している世の中に再び活気を取り戻して、平穏に暮らせる日々が再来して欲しいものだ。

今年は、そういう意味でも冬至にカボチャを食べてはどうだろうか。

著者プロフィール

新開茂樹(しんかい・しげき)
大阪の中央卸売市場の青果卸会社で、野菜や果物を中心に食に関する情報を取り扱っている。
マーケティングやイベントの企画・運営、食育事業や生産者の栽培技術支援等も手掛け、講演や業界誌紙の執筆も多数。

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