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人工種子

公開日:2021.2.25 更新日: 2021.4.26

組織培養により増殖した胚様体や芽などの分裂組織をゲル等のカプセルに包んで種子の機能をもたせ、植物種子の代わりとして流通させる場合、これを「人工種子」という。

現在試みられている人工種子は、将来に植物体として発達しうるカルス、不定胚および不定芽などを植物ホルモンを含む培養液中に浮遊させ、アルギン酸カルシウムのゲルで包んでカプセル化し、さらにその外側をゼラチンやポリジンの薄膜で覆って強固にしてある。
培養液中には植物ホルモンや栄養物以外に抗菌剤、農薬、有用微生物および弱毒ウイルスなどを混入することで、不定胚等の休眠や生長を制御したり、発芽の促進や保護等を図って、自然の種子では得られない性質を附与することができると考えられる。

人工種子の利点としては、体細胞由来の不定胚等を使用するので、親が遺伝的に固定していなくてもその親と同質な個体を多数得ることになり、短期間に品種として流通させられることにある。したがって、優良な株が1株でも見出されれば、これから胚様体を作り人工種子とすれば直ちに品種となる。

体細胞由来の胚である胚様体は現在多数の植物種から作出できるが、一般に発芽率が低いなどの問題点がある。
人工種子は、当面は生産圃場ではなく植物工場において種苗生産用に活用され、人工種子から育てられた苗がプラグ苗等として流通していくものと考えられる。

 

『農耕と園藝』1987年12月号より転載

 

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