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【切花】バラについて 2020年1月

公開日:2021.1.12

バラほど多面的魅力にあふれる花はないだろうと思う。

歴史でいえば楔形文字の文学にも登場するほど古くから認識され、現物の色や形も様々で香りの世界も深淵だ。どれ一つとっても簡単に書けないが、今回はシンプルに流通実態と色について考察してみたい。

大田花きにおける切花バラの年間色別取り扱い本数の割合(2019年)

圧倒的にピンクで次が赤、3番目が白、4位に珍しくオレンジが入る。

色の分布はグラフのようにわかりやすいが、品種別に分けると相当細かいことになる。何しろ2019年は、年間で1045種類の流通があった。単純平均で1品種0.1%のシェアである。

色別のシェアに話を戻そう。ピンク系がシェア31%と一番多いのだが、最も流通本数が多いのもピンク系の品種かといえばそうではない。品種別では第1位が白、2位が赤の品種である。白は婚礼や葬儀でまとまった量で需要があり、品種集約がすすみやすく、赤も贈答需要が多いため、同様に品種集約が進みやすい。

品種別ではピンク系は第3位であった。その品種も薄いピンクカラーで業務需要に使いやすい色合いの品種である。さて、ここまでお伝えしたシェアやランキングは2019年のデータである。

このコロナ禍においては婚礼や葬儀需要の縮小が避けられなかった。

また、イベントやお祝いの花を贈る機会も例年よりも少なく、上位に位置した色の花は厳しい状況だ。それは単価でも確認することができる。

例えば白、赤バラの単価を2019年1月から10月と今年の同期間で比較すると、前年よりも下がっていた。一方ピンク系やオレンジ系品種では前年と比べて下がっていないものもあるようだ(詳しく確認したい方は、花情報提供サービス「ここほれわんわん」から品種別をご確認いただきたい)。

ホームユース需要が高まるなか、ご自宅で花を飾る場合、どのような色が支持されるだろうか。

日本人は一般に「ピンク色」が好きである。そのため、ピンク色が好まれやすい。ピンク色にも濃淡があるが、家に飾るなら明るい色がいいようだ。もちろんこれは需要全体の中心・平均的な好みでもある。かなり飾り慣れた方であれば、くすんだピンクや茶系などの個性ある色合いをも飾りこなすだろう。

いくつかの花屋さんがサブスクリプション(通称サブスク)というサービスで花を販売している。

定額制で月に何度か花が届く、あるいはお店で月に何度か花を受け取れる仕組みだ。定額サービスを利用される方は花を飾り始めたばかりの方が多いそうだ。そしてこのサブスクを利用する方は増えている。サブスクがすべてではないが、新規に花を飾る方が増えているとしたら、ピンク系や元気のでるビタミンカラーが支持されているのもなんだか腑に落ちる。

さらに当社の研究では、ピンクでも青味がかったブルーイッシュピンクが支持されていることがわかった。花の写真を撮影すると、ブルーがかった色味のほうが鮮やかに撮れる場合がある。スマホの普及率も高まり、なんでも撮影する習慣が広がっている。家庭需要が一層拡大することで、ピンク色でも今後はそういう色合いの品種が支持される可能性が高いだろう。

著者プロフィール

桐生進(きりゅう・すすむ)

株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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