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【切花】枝物の輸出、春の切り枝について 2021年3月

公開日:2021.3.17 更新日: 2021.3.31

先日、貿易統計の2020年1月から12月というデータ(財務省)を見ていたら、2020年の切枝・切葉の輸出額は約1.2億円で、またしても前年を超えていた。貿易統計上の分類名は切枝・切葉だが、ほとんどが切り枝であろう。

ここ数年、日本からの切り枝輸出の増加は目を見張るものがある。過去4年の年平均成長率は+20%だ。
切枝類の生産額はおおよそ170億円であるから、現時点での輸出分のシェアは1%未満だと考えられる。

花き類は少量多品種業界のため、ある種類の枝物にとっては輸出向けが相当なシェアとなりつつあるであろう。すでに人気があるのだから、現地での生産も検討されているかもしれない。枝物の国際取り引きが拡大することで、日本の取り引きにも様々な影響が出そうだ。

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話は変わって、今回のコロナ禍で枝物類の流通はどうなったのかを少し考えてゆきたい。

◇品目別、量販・加工業カテゴリの仕入れ割合の比較 2020年度と2017年度

こちらのデータは、「大田花きにおける切枝品目」から、「量販店・加工業(以下量販店)という業態の方が仕入れた本数」が、全体のうち何%あったのか、というシェアを示している。
2017年度と、途中だが2020年度を対比させてみた。品目は春に出回るものと、周年のものからいくつかをピックアップした。

2020年度の特徴としては、「量販店のシェアが伸びた」ということがあった。花き全般についていえる。
装飾用需要が減少したため、様々な商材が他のチャネル(その内の一つが量販店部門)に行き届いた。希望価格とのミスマッチはあったかと思うが、今後の取り引きへの種播きにもなったのではと思う。

さて、枝物類でも、もともと量販店カテゴリのシェアが高い品目がある。表でいえばサクラモモのような商品である。
家庭で飾ることを前提に、スリーブに入った小束でも流通し、店頭での陳列販売がしやすいパッケージング済みのもの。季節の変わり目、催事の花としてだれもが知るもの、こういう性質のものである。サクラやモモはこれらの成功事例だと思う。

花きにおける枝物類は、多様な世界観がありながら、量販店店頭でサクラやモモのようなポジションまで至っていないものも多いと思われる。
例えばこの3月でいうと多くの生花店では3月8日、「ミモザの日」にミモザアカシアが販売されているのだが、量販店ではまだまだシェアが低い状況である。ミモザサラダがあるぐらいなので、食との相乗効果が期待されるのだが。

アオモジは、切り口からのすっきりした香りが良く、多数あるつぼみから花が咲くため、早春のイメージをお届けするのに良い商材だ。今後ますます引き合いが伸びそうだが、十分量が供給できる体制にはないそうだ。

生活者が花を購入する場所として、量販店店頭をますます利用するなか、そうした売り場で販売しやすい物量や長さ等について、枝物商品でも試行する必要がある。

以上、そんな実例とともに、今後に期待したい商材についても述べてみた。

著者プロフィール

桐生進(きりゅう・すすむ)

株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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