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カルチべ市場動向

【切花】カーネーションについて

公開日:2021.5.14

流通するカーネーションの切り花は約6割が輸入品、4割が国産という状況にある。
よって、カーネーションにおいては輸入品も、国産品同様に流通動向の把握は欠かせない。輸入の状況について少し説明しよう。

昨年のコロナ禍環境では多くの輸入切り花が減少した。国内販売環境の悪化があり、取り引き価格に影響した時期があった。
加えて、国際物流の混乱と海外生産地での感染にともなう諸条件の悪化が重なった。生産、流通、消費といずれもが影響を受けたことで輸入切り花本数は減少した。
品目別ではバラが大きく減少、キク類も減少、それから葉物類も減少となった。

一方、カーネーションの輸入本数は維持された。多くの切り花輸入商社さんらの働きの賜物といえる。

農水省の貿易統計によれば、2020年の輸入カーネーション切り花は、2019年と比べてわずかに減少した程度だ。
以下の表は、カーネーション切り花の輸入状況をまとめたものである。

「合計2020」と「合計2019」を比較すると、総本数の欄、「トータル」ではそう大きく変わっていない。
カーネーション切り花の主要輸入国であるコロンビア、中国を見ても確かに大きな減少はなく、中国からの輸入については増加に転じているほどだ。

さて、今年の母の日に向けてはどういう分析が妥当だろうか。

生産供給から追っていくと、まず国内産生産はやや減少傾向が続く。過去の国内生産統計からすると年率マイナス5.8%だ。
海外生産はどうかといえば、日本向けの供給が多い南米は、ラニーニャ現象により天気があまりよろしくない日々が続いていたようで増加するとは思えない。

物流事情はネックになるような気配はない。カーネーションの消費環境については、日本の母の日については目立って悪い情報は出ていない。むしろ注文が伸びていると聞いている。
注文販売の増加傾向を後押しする要因は、昨年のコロナ禍で各社ECサイトに力を入れた結果、マーケティング活動が計画的になったためだ。メールで定期的に商品の案内が届くし、画像もあるため安心して手軽に注文できるのだ。

ところで、海外の花き消費状況が影響を与えそうだ。
北米やヨーロッパともに、切り花も鉢物も需要が伸びているそうだ。コロナ禍で日本と同じように自宅にいる時間が長く、ガーデニングや親愛なる友人親族を思いやる花のギフト需要があるようだ。
さらにアメリカは母の日が日本と同じなので需要タイミングが同じだ。アメリカもカーネーションは完全に南米に依存しているので、日本と取り合っている状況だ。

こうした生産、流通、消費状況から察するに、需要に対して供給不足が発生する確率が高いと思われる。
小欄が掲載される頃には、母の日の結果が出ているだろう。

著者プロフィール

桐生進(きりゅう・すすむ)

株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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