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病原菌のレース

公開日:2021.8.26

ある植物病害に対する抵抗性品種が育成され広く栽培されたときに、これを侵す能力をもつ病原菌の変異体が出現することがある。この病原菌の変異は抵抗性品種を用いて初めて検出できる変異である。このように寄主植物に生じた抵抗性によって初めて認めることができる寄生病原微生物の変異を「レース」と呼ぶ。

病原性遺伝子の突然変異などによって生じた病原性だけが異なる菌糸がレースであり、形態・生態やその他の生理的性質については何ら差異がない菌糸をいう。したがって、ある作物の全品種がその病原菌に罹病性で抵抗性品種が存在しなければ、レースの存在は確認することができない。

植物病名で呼ばれる1つの病害に対応する病原菌の種類は1つの種であるが、この病原菌の集団には同一種であっても分化型が存在する場合、さらに生理的に病原性の異なるレースを有する場合がある。例えばトマト萎凋病の場合、その病原菌はフザリウム、オキシスポラムであり、トマトを侵す種は分化型に分類され、種名に続いてフォーム リコペルシサイと分類名がつく。この種にはさらに病原が質的に異なるレース1、2、3がある。

作物側の抵抗性品種育成にあっては、レース分化の激しい病害に対してはすぐにレースの出現が起こるので、作物の病害抵抗性維持が困難になる。

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