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【鉢物】鉢物パイナップルのススメ

公開日:2021.6.10

園芸業界では、パイナップル科の植物はアナナス類として分類され、大変幅広く流通している。例えば、ギフト用として寄せ植えでよく見かけるのがグズマニア、自宅用サイズならインコアナナスやチランジア(エアープランツ)、スタイリッシュでマニア風ならディッキア……という認識だろうか。マニア的に収集するという方向性がサボテンや多肉植物と同様にあるため、ますます細分化してゆくだろう。

一方で、だれが見てもその花のある暮らしが想像できる、というを提案することも重要ではないか。そこで鉢物パイナップルはまさにうってつけではないかと思われる。

2020年のコロナ禍で在宅時間が長くなり、園芸を嗜好する人が増加している。4〜5月に野菜苗を購入した方が多くいらしたと思うが、夏場に向けて何を購入されたのだろうか。世帯当たりの園芸植物への年間の支出金額は増加傾向にあるが、月別の支出額で見れば4〜5月はドッと増加し、6月から10月は5月の半分以下が続く。4〜5月は独立峰となっているのである。園芸のパイを拡大し、消費額の高いヤマを増やし、毎月の支出額を山脈のようにしていきたいのだ。

そこでまず6月だ。夏も、園芸を始めたばかりの方々に、その楽しさ提案していけるのではないだろうか。そしてまた、パイナップルは園芸初心者だけのものではない。コロナ禍でなかなか外出がかなわないので、皆さんもインターネットで世界中の素敵な風景を見たり、散歩などで気分転換という生活をされているだろう。とはいえ、夏らしいトロピカルな雰囲気を実際に味わえるものではなく、ストレスが高まる。そこでパイナップルだ。南国気分といえば、ハイビスカスやアンスリウムなどがすばらしいが、お子さんがいる世帯などにはパイナップルがわかりやすいのではないだろうか。

たまたまだが、オランダ発の園芸業界のサイトなどを見ていると、フリーセアやパイナップルの鉢植えなどを盛んに提案していた。こうした植物は、シンプルでモダンなインテリアにとてもマッチするという側面もある。その理由は、葉や茎が直線的であり、今風のテイストだからだ。切り花では直線を多用したデザインが増えてきたが、園芸植物ではまだまだラウンド型・丸く仕立てる作りが中心ではないだろうか。

直線的な形状を持つ商品が社会の流行にそぐうこと、旅行などに行けないためトロピカルな商材にチャンスがあること、園芸初心者や園芸に興味のない人にも一目で説明がつくことなどなどを考えると、鉢物パイナップルにはチャンスが多いのではないだろうか。

下記グラフは、大田花きにおけるアナナス類というカテゴリーの月別取り扱い個数だ。7月はギフト用グズマニア、インコアナナスなどの流通量が増加し、少しパイナップルの鉢物も取り扱いがある。3月にはエアープランツなどの需要が多くあるようだ。このように月によって増減があるが、園芸向けの支出が減少する6月ぐらいからトロピカルなわかりやすい商品などがあることで、園芸への興味を切らさずに消費を喚起できるのではないだろうか。

 

著者プロフィール

桐生進(きりゅう・すすむ)

株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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