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【切り花】アンスリウム切り花に原始の荒々しさを

公開日:2021.7.10

アンスリウムは略して「アンス」と呼ばれ、愛されている。主に業務装飾やギフトなどに利用されている花だ。

先日とある小中学生向けの花育会場でアンスリウムを紹介したところ、先生から「洋ランですか?」と聞かれた。このように一般の方からすると、まだまだ珍しい植物というポジションであるようだ。

流通は1年を通して安定的だ。国産と輸入品があり、輸入品が8〜9割を占めている。グラフは、2019年度と2020年度の大田花きにおけるアンスリウム切り花の月別取り扱い本数と単価を示したものだ。

2020年度はコロナによるあらゆる経済活動の停滞が国内国外であり、もちろん程度の差はありながらも現在進行しているのだが、青色の棒グラフで示されるように、供給本数が大きく減った。そして品薄により値上がりした月もあった。

2020年度の影響を受け、現在はアンスリウムだけでなく、様々な品目・地域で需給バランスが不安定で価格変動幅が大きくなっている。秋頃までにはワクチン接種が相当進むといわれているが、引き続き社会動向を丁寧に見ていく必要がある。

ところで、しばらく前から花きの装飾において、直線的なデザインの取り入れが増えていたかと思う。時間経過で褪せるどころか、世界的にも共有されている。

ざっとインスタなどで各国ブーケデザインを探ってみると、ロンドン、モスクワ、アジア各国、日本各地で見られる。アンスリウムはこうした直線的なデザインによく合うと思う。茎がストレートで葉がついていない露わな分だけ強調される。強いていえば、草花類が持つような自然な感じ、計算されていない遊びの部分が足りない。スイカの伸びたツルのような動きがまさにそれだ。アンスリウムの原種系の映像を見ると、木を這う根がそのナチュラル感だろうと思うが、切り花では根を売りにできないため、例えば切前をうんと早めてつぼみから開花を想像できるようなフォルムで出荷する……というスタイルがおすすめなのかもしれない。

これは突飛なことではなく、他品目のガーベラなどではすでにつぼみでの出荷がある。ガーベラといえば開花してから出荷するものだとばかり思われているかもしれないが、時代に合わせて進化しつづけているのだ。

最後にホームユースへの提案をしたい。これはジャストアイデアにすぎないが、黄色アンスリウムの開発が欠かせないのではと思う。黄色はブルーと相性が良く、ヒマワリ×ブルーが父の日から夏場の定番カラーリングだ。夏に強いアンスリウムがギフトやホームユースへ参戦することで、夏場のアイテムに一層の多様性をもたらし、花の消費拡大に寄与するのではないだろうか。

著者プロフィール

桐生進(きりゅう・すすむ)
株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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