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【関東市場 鉢物】バーチカルなシルエットを持つ木立ち性ベゴニア

公開日:2021.8.17

東京都中央卸売市場の統計データの2020年を見ると、前年を100とする指標において観葉植物(鉢)のみが数量と金額両方が100を超えていた。つまり、観葉植物の需要が高まっていることがこの卸売統計データからはっきりと見てとれる。一方、農水省による令和二年度産花きの作付け、というデータを見ると、観葉植物の出荷数は前年を大きく超えているが、作付面積はマイナスだ。面積が増えないというのは、この好調さがどれだけ続くのか? という判断が生産側にあるのだろうか。

植物の販売において、細やかな管理法を伝達しつつ販売すべし、というビギナー育成の重要性がしばし語られる。マーケティング理論である「4P理論」に立ち返ってみると、この波に乗ってどしどしと観葉植物を供給し、あらゆる売り場に観葉植物を並べるというローラー作戦もあるのではないかと思う。ちなみに4P理論の4Pとはプロダクト(商品)、プレース(流通)、プロモーション(販売促進)、プライス(価格)の頭文字だ。

最近は雑貨屋さんや家具屋さんでも観葉植物が店内装飾かと思いきや、販売商品として並べてあるというところも増えて、前述のプレースよろしく売り場の拡大が進んでいる。そこにもう一つのPであるプロダクト、品揃え拡大として木立ち性ベゴニアをご推薦したい。

ベゴニアは大変種類が多く、JFコードでベゴニアと検索すると1200種類もの登録がある。日本花き卸売市場協会の統計分類ではざっくり3分類だ。エラチオール、センパーフローレンス、そしてその他という混在グループから成る。混在するなかに木立性ベゴニアなどが含まれる。流通状況はグラフのように秋口に前年よりも増加し、年間をとおしての取扱い数量も若干のプラス傾向だった。

木立ち性ベゴニアといっても茎が木質化するわけではなく、茎がまっすぐ立ち上がる性質のグループを指す。昨今の花きのトレンド分析から得たキーワードの一つに直線という言葉がある。切り花では茎のすっと伸びた形状をフローリストはデザインに生かす事例がたいへん多いが、園芸植物でも同様にバーチカルなスタイルがいいようだ。このような形状トレンドを考慮すると、茎が伸びるという縦型、しかも面白い葉の模様がある、花もつくという木立ち性ベゴニアはとても時代にそぐう商品だと思う。窓際なら屋内で育つそうだから、インテリアとして楽しむことができる。そして昭和の時代に大流行したことがある歴史から素晴らしい品種が日本各地にあり、再発見が多くあると思う。

木立ち性ベゴニアのことばかりに触れたが、市場流通として多くあるエラチオールやセンパーフローレンスはどうなのかといえば、これら商品も打ち出し方を変えていけば時代に合った需要を取り込めるだろう。エラチオールベゴニアは3〜4月のセレモニー、それから5月の贈答需要でたいへん活躍したところを、他品目から贈答需要分野で押されてしまい、減少傾向だ。しかしながら暖色の黄色やピンクがたいへん美しい商品だ。学校などのセレモニーで飾ってあるケースを見かけるが、なぜに反対色の花も一緒に装飾しないのかと思う。切り花のブーケにおいてはしばらく前からマルチカラーという様々な色、特に反対色を取り入れることで互いを際立たせるデザインが定着しているが、鉢物の装飾ではあまり見かけない。この観点でいけばエラチオールはサイネリアのブルー系商品等と一緒にプロモーションすることがいいように思われる。

センパーフローレンス系は丈夫で周年開花の性質で、近所で多数見かける。私の先輩世代は少し飽きた感があるかもしれない。しかし、ガーデニングを始めたばかりというZ世代にはどうだろうか。管理が容易で古い花を取って世話すれば咲き続けるのだから持続性のある楽しい花だ。

歴史ある素晴らしい商品が多いベゴニアはいつの時代にも対応できる多面的価値がある。そのなかでも今回は木立ち性がデザイントレンドから見た場合は興味深いということを主に紹介してみた。

※花き卸売市場協会の品目統計データは、全国の主な園芸取扱い市場21社の合計値。

※市場協会統計での名称は、リーガー(エラチオール)、センパー(センパーフローレンス)となっているがここではそれぞれ変更している。

※バーチカル 「垂直の、縦の」を意味する英語。バーチカルファーミング(垂直多段式農法)などでよく使われる。

著者プロフィール

桐生進(きりゅう・すすむ)
株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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