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カルチべ市場動向

【関東 鉢物】 コチョウラン鉢物について

公開日:2021.10.15

コチョウラン鉢物は鉢物最大の商品である。弊社推計では、全国に272億円分のコチョウランが年間流通している。主にギフト用として、法人関係からパーソナルまで様々に利用されている。

流通するコチョウランは花の大きさなどで大輪系、中輪系、ミディ系、ミニ系の4つに分類され、おおよそ用途も分かれる。ミディ系とミニ系は統計的にはまとめて扱われる。これらの流通割合については、大田花きの取扱い状況から想像するとミディ+ミニ系が約60〜70%、大輪系が約20〜30%、中輪が数%となる。価格帯は大輪系が1とするとミディ+ミニ系がその4分の1から5分の1である。

用途としては大輪系ほど業務ギフト用途が強く、ミディ系のように小型になるとパーソナルギフトという状況だ。とはいえ、大輪系でも敬老の日のお祝いにお使いいただく方もおり、一概に決めるものではない。コロナ前から2021年8月までの流通動向について、東京都中央卸売市場の統計データを使ってグラフ化してみた。それが下記の図だ。

折れ線が単価、棒グラフが取扱い鉢数になる。2020年4月・5月が緊急事態宣言下で消費が落ち込み単価・取扱い鉢数が落ち込むが、その後、徐々に単価(折れ線)を戻している。しかしながら流通鉢数は2021年になっても2019年並みに戻ってはいない。

需要の減少などもあったため生産が減少したところもあるが、生産サイクルがずれてしまっているようだ。多くのコチョウランの苗は海外産だ。海外で作られたコチョウランの苗を国内で消費に合わせて開花させるというスタイルで供給がなされており、このサイクルがずれるとなかなか戻らないようだ。

この秋・冬も十分な供給があるのか疑問が残る。大輪系コチョウラン鉢物は、行動心理学に基づくところの「ギフトとして外さない」という安心感を提供できる商品だ。花き以外を見ても代替が見当たらないので、今後も安定した流通が望まれる。

ところで、コロナ禍において切り花・園芸植物ともにホームユースが拡大した。コチョウラン鉢物はどうだろうか。ホームユース向け商品は総じて価格帯が低いものが多いのであまりターゲットにはならないかもしれないが、今後を考えればとても重要なポイントだ。このたびのホームユースを伸ばした原動力の一つに若者世代、Z世代の消費と情報発信があったといわれている。Z世代とは1996年から2015年生まれの人たちのことを指す。この世代の5年後は30歳。彼らは婚礼マーケットのメイン顧客層になり、様々なお祝いイベントで今以上に花きを購入するようになる。

今のうちにホームユース用コチョウランをどしどし提案しておけば、式場の装飾にもコチョウランが多用されるかもしれない。彼らはシンプルな装飾デザインを好む層といわれているので、コチョウランなどは相性が良さそうだ。今後を見据えて、ホームユース向けコチョウランの鉢物の提案に着目してはいかがだろうか。

著者プロフィール

桐生進(きりゅう・すすむ)
株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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