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カルチべ市場動向

【関東 鉢物】パンジー

公開日:2021.12.14

総務省の家計支出データによれば、世帯当たりの園芸植物への支出額は増加傾向にある。精神的ストレスを花や緑を飾る、世話をすることで低減できるという体感が急速に広まり、定着したためだろう。社会が自然志向に向かうトレンドにおいてガーデニングはぴったりの趣味でもある。

今回はパンジーを取り上げる。東京都中央卸売市場のデータをグラフに書き出すと図のようになった。苗物の統計データは、習慣的に箱単位となっている。昔はポットに一つずつ入っているのではなく、箱単位での取り引きだったそうで、その名残だ。

グラフの棒グラフが箱(トレー)数、折れ線グラフが箱当たりの平均取り引き単価だ。パンジーは1トレーに3.5号サイズのポットで24入りという規格商品が主流だ。

さて、グラフから数量は減少傾向が続いていたのが2020年度増加に転じ、取り引き価格は数年前から少し上がっていたのだが、この1年で7%程伸びている。

人気の傾向をキーワードで表すと「シャビーシックな色合い」、「フリンジ系」だ。シャビーシックとは、インテリア業界用語で古びてはいるが良いものを示す言葉、色としては特定の一色を指すものではない。錆びた感じの色合い、かすれたようなアンティークカラーなどが該当する。ぼんやりとした水彩画のような感じだ。こうした淡い水彩画のような色味はパンジーだけではなく、例えば染色したスイートピーなどでも取り入れられ大変ヒットしている。実は切り花でもパンジーの人気が数年前から高まっているのだが、引き合いのある色目や形の傾向は苗物とまったく同じだ。

生活者の視点からすれば、ガーデニングのトレンドと屋内飾り用の切り花には境目がないのではないか。パンジーでいえば、切り花としても日持ちがいいので、ガーデニングで育てたパンジーを切り花にして屋内で飾るということが普通にあるだろう。その時にインテリアやファッションとの相性を考えるだろうから前述のように、インテリア業界のキーワードやファッション的なキーワードが商品の特性を表現する時に出てくるのではないかと思われる。

境目が薄くなってきたという傾向はここ日本だけではない。ベルギーのフローラルフェアが2021年開催され、そこで入賞した鉢物苗物の受賞コメントを読んだところ、「ガーデニング用に使いやすく、また切り花としても良い」、という両面を評価されての受賞だったようだ。日本もヨーロッパ並みに植物が普段のものになってくるとますます二刀流! の商品が増えそうだ。

 

著者プロフィール

桐生進(きりゅう・すすむ)
株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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