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【関東 切り花】アカシア

公開日:2022.1.19

農林水産省発表の令和2年産花き生産出荷統計によれば、切り花のカスミソウ、アルストロメリア、そして枝物類の生産面積が減少していないことがわかる
需要面から考えると、枝物類は季節性の演出に必要な品目で大変人気がある。初春に芽吹き、春から夏にかけて葉が展開し、実がなるものは実がつき色づき、秋に紅葉し、落葉する。四季の変化そのものを表現することができるアイテムだ。供給面から考えると、労力が一時に集中し過ぎないという側面もある。花が咲く草花であれば、出荷時期がどうしても集中しがちだが、自然開花の時期にピッタリと出荷する必要がない種類の枝物は、比較的労働力を分散できる長所がある。

別件にて枝物をテーマに原稿を書こうと思って小社の本棚を調べたところ、『新特産シリーズ枝物』(農文協・1998年)という本があり、冒頭に上記とまったく同じようなことが書いてあった。

さて、最近生産が増えている枝物商品といえばユーカリ、次いでアカシア類だ。アカシア類は、出荷時期によってその葉を愛でる時期と花を愛でる時期とがある。

大田花きにおける2020年の月別のアカシア類の出荷本数をグラフ化してみたところ、下記のようになった。

 

アカシア類はほぼ国産で構成されている。国産のアカシアはミモザアカシア、ギンヨウアカシア、サンカクバアカシアの3タイプで占められている。出荷のピークは2月で、1月から3月は黄色の初春らしい、花がついた商品が流通する。明るい黄色を見ると「春だなあ」と多くの方が感じ、気持ちが明るくなるだろう。アカシアはそのように人を元気づけてくれる花だ。

明るい黄色が見る人を元気にさせるギンヨウアカシア。

 

秋から冬はギンヨウアカシアのうち、葉の色がシルバーがかったり、紫系の葉色を持つ商品が流通する。一本でもふさふさとボリュームがあり、枝が自然としなった感じが優しい印象だ。

さらにここに最近は、「ブルーブッシュ」という葉が灰がかった渋い色合いのアカシアコベニーの種類が増えている。アカシアに限らないが、灰がかった(=「アッシュ」と呼ばれる)色合いの多くの商品には、「アッシュ〇〇」という名前がついて流通していて大変人気が高い。染めることでこの微妙な色合いを表現する品目もあるぐらいだ。もともとの性質として、くすんだ色の葉色の品種は今後の需要も確実だろう。

近年増加傾向にある、ブルーブッシュ。葉がやや灰色がかっている。

アカシアには少量だが輸入品もある。割合としては約1~2%程度で、1月から3月にかけてイタリア産の花がついたミモザアカシアが流通する。

蛇足ながら先月も述べたとおり、切り花と鉢物の人気はシンクロすることがある。アカシアは、切り花でもこのように活発だが、鉢物でも人気がある。

枝物としては、3月の物日としてミモザの日需要が注目を浴びているため引き続き引き合いが強いと思われる。また、特筆すべきなのはアカシアの花はドライフラワーとしても長く楽しむことができることだ。ドライフラワーにした小さなアカシアの花は、加工して装飾品などにも利用できるため、イヤリングに転用する人もいる。このように多面的な楽しみ方ができるのがアカシアなのだ。

 

著者プロフィール

桐生進(きりゅう・すすむ)
株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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