HOME 読みもの アグリニュース 病害抵抗性が活性化されると虫害が増えるのはなぜか?~病害と虫害に強い作物品種の開発に期待~ アグリニュース 病害抵抗性が活性化されると虫害が増えるのはなぜか?~病害と虫害に強い作物品種の開発に期待~ 植物栽培病害害虫虫害免疫 公開日:2022.4.22 植物には免疫系が備わっています。病原微生物の侵入を感知した植物は、抗菌性物質を生成して感染を阻害します。免疫系が活性化される時に、中心的な役割を担うのがNPR1 というタンパク質です。病原微生物が感染すると、NPR1 タンパク質によって抗菌性物質の生成に関わる遺伝子群が働きはじめます。 その一方で、植物には虫害に対する防御システムも備わっています。たとえば、昆虫が葉を食べると、 遺伝子の働きを調節するMYC というタンパク質(転写因子)が活性化されます。すると葉に忌避物質がたまり、虫害の被害が減ります。 イラスト:坂木浩子 これまでに、病害と虫害に対する、それぞれの植物の応答メカニズムについては、多くの知見が集められてきました。しかし、野外では病害と虫害に同時に晒されることが多くなり、その時に植物の応答メカニズムについては、まだ多くの謎が残されています。特に注目されるのが、病害に対する免疫系が活性化すると、虫害に対する防御システムが崩壊して、虫害の被害が増大するという現象です。この現象に関して、遺伝子やタンパク質レベルでのメカニズムは未解明でした。 このほど、名古屋大学を中心とする研究グループは、NPR1タンパク質の機能に着目して、網羅的な研究を行いました。その結果、免疫系を活性化する NPR1タンパク質が、虫害防御システム を活性化する MYC転写因子と結合することで、MYC 転写因子による虫害抵抗性遺伝子の発現を抑制することが明らかになりました。つまり、NPR1タンパク質は免疫系を活性化する因子であると同時に、虫害防御システムを抑制する因子としても作用することがわかったのです。 今回の成果は、病害と虫害のどちらにも強い品種の開発につながると期待されます。 文:保谷彰彦 この記事をシェア 関連記事 2024.4.6 第6回 獣がいフォーラム 「市民の力で変わる 獣がい対策への新しいアプローチ」レポート(後編) 去る3月2日、表題のフォーラムが開催された。前編で紹介した基調講演に続いて行われ […] 獣がいフォーラム獣害 2024.4.5 第6回 獣がいフォーラム 「市民の力で変わる 獣がい対策への新しいアプローチ」レポート(前編) 生産者が丹精を込めて栽培しても、収穫前に野生動物に農作物を食べられては、すべての […] ヒグマ対策獣がいフォーラム獣害 2024.4.4 第39回花卉懇談会フォーラム~新しい園芸植物の伝え方・使い方・作り方~ 2024年2月23日、表題のフォーラムが東京農業大学世田谷キャンパスにおいて開催 […]