HOME 読みもの アグリニュース 潅水管理技術がなくても大丈夫~ゲノム編集技術を利用して トマトの糖度を高めることに成功~ アグリニュース 潅水管理技術がなくても大丈夫~ゲノム編集技術を利用して トマトの糖度を高めることに成功~ 糖度トマト栽培 公開日:2022.6.11 近年、糖度の高い甘いトマトが好まれることから、多くの生産者は潅水管理によってトマトの糖度を高める栽培を試みています。しかし潅水量を制限すると収量が低下するだけでなく、過剰な水分ストレスによって樹勢が弱り、酷い場合には枯れてしまうことがあります。 そこで、トマト糖度を高める技術の開発に乗り出した名古屋大学、神戸大学、筑波大学、理化学研究所の研究グループは、葉から果実に糖が流入する仕組みに注目しました。トマトに限らず、植物は光合成によって葉で合成したグルコースをスクロースという別の糖に変えて果実に流し入れます。果実ではインベルターゼと呼ばれる酵素が働いて、スクロースをグルコースとフルクトースに分解しするため、果実中のスクロースの濃度は低く抑えられて、葉から果実へのスクロースの流入が続くことになります。 イラスト/坂木浩子 スクロースの流入が続けばトマトの糖度は高まるのですが、インベルターゼインヒビターというインベルターゼの働きを阻害する分子が働くと、果実中のスクロース濃度が高まって流入は止まってしまいます。 この仕組みを働かなくできれば、果実へのスクロースの流入が続くようになると考えた研究グループは、特定の遺伝子を狙って働かなくできるゲノム編集技術を用いてインベルターゼインヒビターの機能を抑えました。その結果、果実の大きさはそのままに、トマトの糖度を上昇させることに成功したのです。 今後、インベルターゼインヒビターの機能が抑えられたトマトが新品種として実用化されれば、高度な潅水管理技術がなくても高糖度のトマトを消費者に届けることができるようになるでしょう。 文:斉藤勝司 この記事をシェア 関連記事 2023.10.2 地球最古の花は昆虫により送受粉されていた! 現代の植物の約90%(30万~40万種)は、被子植物と呼ばれる花を咲かせる植物で […] 送粉システム風媒脊椎動物媒生物多様性昆虫媒被子植物 2023.9.15 日本の伝統文化と科学からみた絶滅危惧種ムラサキ 何百年もの間、人々は伝統的に植物に含まれる化合物(ファイトケミカル)を染料、香辛 […] ファイトケミカルムラサキ絶滅危惧種 2023.9.2 第38回 花卉懇談会セミナー 〜園芸植物の生産・管理に活用できるLED照射技術の開発と実装〜 去る2023年7月22日、表題のセミナーが東京農業大学世田谷キャンパスにて開催さ […] ラン栽培花卉懇談会LED