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痩せた土地で農業が可能になる?~リンが欠乏した環境でも 植物が生長する仕組みを解明~

公開日:2022.6.2

自由に動き回ることができない植物は、自生する土壌に栄養素が不足してもじっと耐えるしかありません。そのため植物には不足する栄養素を補う仕組みが備わっており、必須元素のリンに関しては、生体膜を構成するリン脂質中のリンを、光合成で作られる糖に置き換えることで不足するリンを補うことができます。

こうした仕組みは「膜脂質リモデリング」と呼ばれており、リンが糖に置き換える仕組みは盛んに研究されてきましたが、リンが欠乏した時にリン脂質の代謝がどのように変化するかは明らかになっていませんでした。

そこで理化学研究所環境資源科学研究センターの中村友輝さんら研究グループは、リン欠乏時ものリン脂質代謝の変化を調べるに当たって、代表的なリン脂質であるホスファチジルコリンの合成に関わるPMT酵素に注目しました。

イラスト/坂木浩子

この酵素はホスファチジルコリンの前駆体のホスホコリンを合成する働きを持ち、シロイヌナズナには3種類のPMT酵素があることが分かっています。このうちのPMT1とPMT2がリン欠乏時に働くことから、両方の遺伝子を同時に破壊した「pmt二重破壊株」を作製して、リン欠乏状態に置きました。遺伝子を破壊していない野生株に比べて、pmt二重破壊株では根が短くなったのですが、ホスホコリンを与えると根の長さが回復し、葉に対しても同様の効果が認められました。

こうして2つのPMT酵素がホスホコリンを合成することでリン欠乏状態でも成長を維持できる可能性が示されたことで、この仕組みを活用することにより、将来的に痩せた土壌でも農業生産が可能になるのではないかと期待されています。

文:斉藤勝司

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