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【関東 切り花】スターチス

公開日:2022.4.26 更新日: 2022.4.28
(画像/photolibrary(https://www.photolibrary.jp/))

 

農林水産省の統計データでは、令和2年のスターチス類の出荷数量は1億1800万本となっている。月並みな表現だが、日本に住まう一人につき、一本の切り花スターチスが行きわたるぐらい生産されているということだ。

スターチスには大まかに二系統の商品群がある。シヌアータ系とハイブリッド系だ。シヌアータ系は、ブラシのような花序をつけた枝が何本か枝分かれしたような形をしている。ハイブリッド系はより細い枝が噴水のように伸びた形をしている。花序はシヌアータ系よりも細かく、連なったビーズのような形状だ。

流通本数が多いのは圧倒的にシヌアータ系なのだが、それは下図をご覧いただければ一目瞭然だ。

 

シヌアータは主に仏花用の花材として人気が高く、紫色系の品種が主力だ。さらにここ数年でブルーがかった色味を持つトーンや、青紫がトレンドカラーとして評価されるようになったことで、スターチスが持つ青っぽい色合いの評価が仏事だけでなく、幅広く評価されるように変わってきた。例えば、大田花きが主催する花きのトレンドコンテスト、「フラワー・オブ・ザ・イヤー・OTA」の受賞履歴をさかのぼると、2020年の入賞商品にシヌアータ系のとある品種が新品種奨励賞として選出された。受賞した品種は淡い青みがかった紫色の品種だった。スターチスに限らないが、トレンドの変化で従来の評価軸が180度変わっていることがある。

ここ数年のトレンドキーワードは、ブルーイッシュ、ドライテイスト、ファインラインというものが挙げられる。ブルーイッシュは青みがかった色合いを指す。ドライはドライフラワーのドライ。乾いた質感がある植物のことだ。最後のファインラインというのは、細くて直線的な草姿を指す。これら3つが生活者が身近な花を選ぶ上での新しいキーワードとなっている。

スターチスにはこれらのキーワードが多分に含まれている。そこでスターチス切り花が前述のコンテストで入賞するほど評価されるようになったと分析している。

次にハイブリッド系だが、こちらはシヌアータ系よりもドライテイストでファインラインな印象を与えてくれる。生活者の目にする機会が増えれば、きっとご興味を持たれる方が増えることだろう。

図のように、ハイブリッド系の流通本数は月により差がある。安定した供給が望まれるところだ。その課題に応えるように、ハイブリッド系の輸入が増加している。農水省の防疫統計データからハイブリッド系の輸入本数を推測すると、2015年頃は年間20万本程の輸入本数だった。それが2018年以降年間で120万本程輸入されるようになっている。大変興味深いデータだ。ご参考まで。

著者プロフィール

桐生進(きりゅう・すすむ)
株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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