HOME 読みもの アグリニュース 害虫防除の標的に利用できる?! ~虫こぶを作る昆虫は体内で植物ホルモンのサイトカイニンを作っていた~ アグリニュース 害虫防除の標的に利用できる?! ~虫こぶを作る昆虫は体内で植物ホルモンのサイトカイニンを作っていた~ 昆虫害虫虫こぶ酵素サイトカイニオーキシン 公開日:2022.8.12 植物を植資源とする植食性の昆虫には、植物の組織形成を刺激して異常なこぶ(これを「虫こぶ」という)を作る種がいることが知られています。茨城大学、佐賀大学、鹿児島大学の過去の研究で、虫こぶを形成する昆虫が、植物ホルモンのオーキシンの合成に関わる酵素を持つこと、同じく植物ホルモンのサイトカイニンの一種を体内で合成している可能性が高いことを分かっていました。 イラスト/坂木浩子 さらにサイトカイニンに関しては、虫こぶを作らない植食性昆虫や、植物を植資源としない昆虫も持つことを明らかにしていたのですが、植食性でない昆虫まで植物ホルモンを合成する理由は明らかになっていませんでした。そこで前述の研究グループは、昆虫だけでなく、ダニ、クモを含む多様な節足動物を分析して、オーキシン、サイトカイニンを持つかどうかを調べました。 その結果、すべての節足動物が、体内に高濃度のオーキシンを持ち、サイトカイニは特定の昆虫だけが持つことが分かりました。これらの植物ホルモンの量が、植食性や虫こぶを形成する能力に関わるかどうかを調べたところ、オーキシンの量には違いはなかったのに対して、サイトカイニンは植食性や虫こぶを作る種のほうが多く持つことがわかりました。 こうした研究結果は、節足動物の体内でオーキシンや、オーキシンを合成する酵素に何らかの役割があり、植物を刺激して虫こぶを作らせる刺激にサイトカイニンが利用されていることが示唆されました。そのため将来的に虫こぶを作ることで農作物に加害する害虫に対してサイトカイニンを標的とした新たな防除法を開発できるかもしれないと期待されています。 文:斉藤勝司 この記事をシェア 関連記事 2023.9.15 日本の伝統文化と科学からみた絶滅危惧種ムラサキ 何百年もの間、人々は伝統的に植物に含まれる化合物(ファイトケミカル)を染料、香辛 […] ファイトケミカルムラサキ絶滅危惧種 2023.9.2 第38回 花卉懇談会セミナー 〜園芸植物の生産・管理に活用できるLED照射技術の開発と実装〜 去る2023年7月22日、表題のセミナーが東京農業大学世田谷キャンパスにて開催さ […] LEDラン栽培花卉懇談会 2023.9.1 植物の復活には「奇跡の遺伝子」ではなく、多くの遺伝子が関わっていた! 復活植物はアフリカ、アジア、オーストラリア、南米に分布し、季節的または周期的に乾 […] クラテロスティグマ復活植物奇跡の遺伝子