HOME 読みもの アグリニュース 根を利用する根菜類の生産性向上に活かせる?~ 環境ストレスへの応答の一環から根の伸長に関わる遺伝子を発見~ アグリニュース 根を利用する根菜類の生産性向上に活かせる?~ 環境ストレスへの応答の一環から根の伸長に関わる遺伝子を発見~ TAF12bURPnobiro6株根菜 公開日:2022.10.4 地中に根を張る植物は生育に不敵な環境でなくても自ら移動することはできないため、環境ストレスに対応する能力を発達させてきました。ただし、環境ストレスへの耐性が高まると、植物の成長が阻害されることが分かっていましたが、そのメカニズムは明らかになっていませんでした。 そこで理化学研究所などの研究グループは、環境ストレスに適応する機能の一つで、細胞内小器官の小胞体によるストレス応答(以下、UPRと略す)に注目。植物学の研究に用いるシロイヌナズナが持つUPRに関わる3つの分子のうち2つを壊した変異株(bz1728株)を作ったところ、天然に存在するシロイヌナズナ(野生株)に比べて、根の伸長が10%程度に抑えられることを発見していました。 しかし、根の伸長が抑えられる要因については分からないことが多いことから、根の伸長阻害に関わる遺伝子を探索する研究が行われました。変異株の遺伝子にランダムに変異を起こした結果、根の長さが回復する株が見つかり、「nobiro(ノビロー)」と名付けられました。複数見つかったnobiro株のうちの一つ、nobiro6株の遺伝子に生じた変異を調べると、「TAF12b」という遺伝子が根の伸長に関わっていることが判明しました。 TAF12bがURPの活性を促すとともに、根の伸長抑制にも関わることが明らかになりましたが、根の伸長が回復したのはnobiro6株だけではありません。他のnobiro株の研究を進めることで、URPによる根の伸長を制御する仕組みの解明が進めば、根を利用する根菜類の生産性の向上に貢献できるかもしれません。 文:斉藤勝司 この記事をシェア 関連記事 2023.10.2 地球最古の花は昆虫により送受粉されていた! 現代の植物の約90%(30万~40万種)は、被子植物と呼ばれる花を咲かせる植物で […] 昆虫媒被子植物送粉システム風媒脊椎動物媒生物多様性 2023.9.15 日本の伝統文化と科学からみた絶滅危惧種ムラサキ 何百年もの間、人々は伝統的に植物に含まれる化合物(ファイトケミカル)を染料、香辛 […] ファイトケミカルムラサキ絶滅危惧種 2023.9.2 第38回 花卉懇談会セミナー 〜園芸植物の生産・管理に活用できるLED照射技術の開発と実装〜 去る2023年7月22日、表題のセミナーが東京農業大学世田谷キャンパスにて開催さ […] 栽培花卉懇談会LEDラン