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【関東 鉢物】アジサイについて

公開日:2022.5.16
(画像/photolibrary(https://www.photolibrary.jp/))

仕事柄、日頃は切り花のアジサイを見る機会が多いこともあってか、鉢物のアジサイの多様性にははっとさせられる。切り花はテマリ咲きをベースにした品種展開がほとんどだが、鉢物ではテマリ咲きが多いとはいえ、「ガクアジサイ」や「ヤマアジサイ」なども商品化されており、多様性という点でははるかに豊富さを上回っている印象だ。

ガクアジサイ。(画像/photolibrary(https://www.photolibrary.jp/))

昨今の花きのトレンドキーワードである「ナチュラル」という点においては、一般的に切り花商品のほうがよく雰囲気を捉えていると思うことがあるが、ことアジサイにおいては鉢物のほうがトレンドをよく反映した商品が流通しているように思う。

鉢物アジサイの品種開発は国内においても非常に盛んだ。例えば、「日本フラワー・オブ・ザ・イヤー」という品種コンテストがあるが、これには毎年のようにアジサイの新商品が出品される。2019年には日本のアジサイを元に作出された「ラグランジア ブライダルシャワー」が、また2021年には「月虹(げっこう)」というアジサイがそれぞれ大賞を受賞した。前者は野趣あふれる枝ぶりが特徴だし、後者はガク咲きからテマリ咲きに変化する面白さがあり、切り花では再現しがたい表情を持っている。このように続々と新品種が登場するのも、国内の育種家の皆様が頑張って下さるからこそと思っている。

さて、国内における鉢物アジサイ流通量について、全国の主要市場21社、2016〜2020年の5年間の取り扱いデータを見てみよう(出典:日本花き卸売市場協会)。いずれも約220万鉢で推移している。鉢物全体の取り扱い量は同期間では減少傾向なので、実質シェアは増加していると捉えていいだろう。

次に東京都中央卸売市場の統計データから月別に出荷量を見ると、3月頃から増えはじめ、5月にピークを迎ると、その後6月まで一定量の流通があることがわかる。需要の山裾が広いことから、母の日に限らず人気の商品であるといえるだろう。

ところで私は、季咲きの花と店頭販売品目との相関は、高まっているのではないかという仮説を立てている。例えば、4月にチューリップがきれいに咲き誇る名所や画像がSNSで広がると、生花店や市場にチューリップの問い合わせが増えることがあるのだ。美しい季節を象徴するその花の需要が一時的に高まるのではないかと想像される。つまりホームユースとは、季節を消費すると言い換えることもできるように思う。

よって、鉢物のアジサイについては季咲き商品として6月の裾野を伸ばす方向が良いように思う。SDGsの観点からも販売促進していけるのではないだろうか。

著者プロフィール

桐生進(きりゅう・すすむ)
株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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