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【関東 切り花】ダイアンサス類について

公開日:2022.6.8
(画像/photolibrary(https://www.photolibrary.jp/))

花き業界ではダイアンサス属の植物は幅広く利用されており、とくに生産が多いのはご存じのとおりカーネーションだ。流通上は、カーネーションを除くダイアンサス属の花きをダイアンサスと呼んでいる。属名が商品名として使われているのでちょっとややこしい。本コラムでは以降ダイアンサス類とする。

ダイアンサス類とカーネーションの違いは基になる原種が違うのだが、見た目からするとカーネーションが大型で八重の花をつけるのに対して、ダイアンサス類は小型の花で一重、ないし半八重の花をつけるタイプが多いといえばわかりやすいかもしれない。

ダイアンサス類には草花類のような野趣を感じるようなところがある。昨今、ナチュラルトレンドが定着したことでダイアンサス類の需要が増していると思われる。従来、ダイアンサス類で拡大基調の商品といえばテマリソウだった。

テマリソウは2003年に日本で開発された商品だ。花びらや蕊(しべ)が変異し、細かい緑色の芽が多数集まったボールのような形をしている。マリモをイメージいただくと良いだろうか。日持ち性が良く、フラワーアレンジメントなどにたいへん使いやすいことから需要が拡大した。2000年代の花き業界のトレンドは、面や空間を大輪や八重咲きのアイテムで埋めるデザインが主流だったので、テマリソウのような商品はそのデザインとの相性も良く、待ち望まれていたのだ。

その後、2015年頃から花きのデザインでは明らかに小花が台頭し、さらにさわさわとした河原の草むらのようにそよぐ雰囲気がデザインに取り入れられてくる。コロナ禍で在宅時間が長くなったため、ここ1-2年は自然への渇望がさらに上昇しており、枝物などの需要もうなぎ上りであることが読者にはすでにおわかりだろう。これは現在のトレンドであり、今後も数年は続くものと思われる。

こうなってくると、小花をたくさんつけて草花のような雰囲気を醸し出せるダイアンサス類はますます重宝されるようになるだろう。なにしろダイアンサス類の一種である日本在来のカワラナデシコは、名前から想像できるように、河原や河川敷などに生えているのだ。自然の雰囲気を演出しないわけがない。カワラナデシコのような在来種以外にも、種苗会社や個人育種家によって商品化されシリーズ化しているダイアンサス類も多数ある。著名なシリーズでは「ソネット」、「ラフィーネ」、「ソロミオ」などがあり、それぞれ個性があり作付けの拡大が期待される。

カワラナデシコ。(画像/photolibrary(https://www.photolibrary.jp/))

トレンドの面からダイアンサス類への期待を書き連ねたが、物価上昇の点からもダイアンサス類の引き合いは高まる可能性がある。物価高が進行する日本社会においては、お得感を得やすい花の提案がヒット要因として挙げられるだろう。ダイアンサス類はスプレー咲きで花数が多く、日持ち性が比較的長い商品が多くある。枝物、ドライフラワーとともにトレンドとお得感に敏感な若年層にきっと評価されると確信している。

 

著者プロフィール

桐生進(きりゅう・すすむ)
株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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