HOME 読みもの アグリニュース 分子メカニズムを解明!! 植物の栄養状態によって調節される菌根形成 アグリニュース 分子メカニズムを解明!! 植物の栄養状態によって調節される菌根形成 菌根アーバスキュラー菌根リン酸塩PHR減肥料リン酸感受性 公開日:2022.7.1 更新日: 2022.6.30 陸上植物は、ある種の土壌菌類と共生して菌根をつくることで、リン酸を効率よく吸収できます。 菌根とは菌類の細胞と根の細胞の複合体のことで、菌根の1つであるアーバスキュラー菌根(AM)は、80%以上の陸上植物に存在すると推定さていれます。AMでは菌類は根の細胞に入り込み、土の中で菌糸のネットワークを形成します。土壌のリン酸は菌糸から取り込まれて、根へと運ばれます。 興味深いことに、植物はその生理状態に応じて、AMの形成を調節することが知られています。リン酸塩の少ない土壌では植物によって共生が促進され、施肥などによりリン酸塩が充分にある土壌では共生が阻害されるのです。この現象は約50年前に発見されましたが、リン酸に依存したメカニズムは長らく不明でした。 イラスト/坂木浩子 このほど、ミュンヘン工科大学(ドイツ)などの研究グループは、そのメカニズムの中で、PHRと呼ばれる転写因子が重要な役割を果たしていることを明らかにしました。PHRには、リン酸塩の欠乏に対応するための植物の遺伝子群を活性化する働きがあり、AMの形成と機能に必要な遺伝子群全体を調節していることがわかったのです。転写因子とは、DNAがmRNAにコピーされるのを制御し、最終的に必要な種類や量のタンパク質が形成されるようにするタンパク質のことです。これらの仕組みは、植物が菌類に供給する光合成産物の量を調節するのに役立つと研究グループでは考えています。 AM形成をコントロールできれば、人工肥料の量を減らすことができ、持続可能な農業に応用できると期待されています。さらに、今回の成果は、育種やゲノム編集によって、植物のリン酸感受性を変えることにも利用できる可能性があると研究グループでは考えています。 文/保谷彰彦 この記事をシェア 関連記事 2023.3.24 畑で半導体材料を生産する時代がくる? 植物由来のセルロース繊維に半導体の特性があることを発見 植物に含まれるセルロースをナノメートルサイズ(1ナノメートルは10億分の1メート […] セルロース植物由来半導体 2023.3.18 第38回 花卉懇談会フォーラム 「不透明な時代に考える 地域からの発信」 去る2月18日、東京農業大学世田谷キャンパスにて表題のフォーラムが開催された。ロ […] 花卉懇談会コミュニティガーデン宿根草花卉セミナー 2023.3.10 不耕起農業、カバークロップの栽培で土壌への炭素貯留を向上できる 地球温暖化対策一環として、土壌への炭素の貯留を促すことを目的に、圃場を耕さずに作 […] 不耕起二酸化炭素カバークロップ