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タンポポは育種に革新をもたらす!? クローン種子生産につながる遺伝子を発見

公開日:2022.6.23

セイヨウタンポポをはじめ、タンポポ属植物の多くは、受精せずに種子をつけます。この生殖の方法をアポミクシスといいます。アポミクシスは、農業の聖杯ともいわれます。なぜなら、アポミクシスはクローンの種子をつけるので、一代雑種(F1)品種などで生じる優れた形質が、1つのステップで固定化され、そのまま親から種子へと伝わるようになるからです。もしアポミクシスによって作物の育種が可能になれば、種子生産のコストが下がり、ハイブリッド育種の利点が世界のより多くの作物にもたらさるという点で、農業に計り知れない価値をもたらすでしょう。

しかし、このような利点があるにもかかわらず、作物の中にアポミクシスする種はほとんどなく、育種による導入もうまくいっていません。

そこで、KeyGeneやワーゲニンゲン大学(共にオランダ)などの研究グループは、アポミクシスで繁殖する野生植物の約400種のうち、代表的な植物であるセイヨウタンポポを用いて研究を進めてきました。

イラスト/坂木浩子

そして、今回の研究で、アポミクシスの主要な遺伝子を発見しました。この遺伝子はPAR遺伝子と名づけられました。PARとは、卵細胞が受精せずに胚へと成長する過程である単為生殖(Parthenogenesis)を短縮したもので、単為生殖はアポミクシスの主要なプロセスの1つです。さらに、セイヨウタンポポのPAR遺伝子を、アポミクシス植物ではないレタスに導入しました。その結果、レタスは受精していないのに、卵細胞が胚へと成長し、単為生殖することがわかったのです。

今回の発見により、近い将来、植物の育種に大きな革新がもたらされると期待されています。雑草の代表選手セイヨウタンポポには、世界の食料事情に大きな影響を与える可能性があるようです。

 

文/保谷彰彦

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