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カルチべ市場動向

【関東 鉢物】ヤシ類について

公開日:2022.7.8 更新日: 2022.6.30
(画像/photolibrary(https://www.photolibrary.jp/))

日本フローラルマーケティング協会(JFMA)が2021年度に行った花の消費動向調査のうち、観葉植物の購入・栽培実態というアンケートレポートが公開されている。内容を一部紹介してみよう。

このレポートは、全国の20〜50代の男女520名に観葉植物の購入動向などをインターネットアンケートをとおして回答してもらったものだ。

観葉植物について購入したことがある方の購入用途としては自宅用が85.6%、贈答が24.7%という結果だった。また、自宅用に購入する観葉植物のサイズ別の調査からは小型の商品が8割で、60cm以上のやや丈のある商品が20%ぐらいご利用いただいているという結果がある。この調査から、自宅用の観葉植物という用途に対して大型のインテリアのように飾るものと、小型のテーブルサイズと2パターンご購入いただけている、これが観葉植物の強みだと思われる。

さらに、飾る場所についても調査がなされている。玄関からリビング、ベランダとひととおりの居住空間区分への導入についても調査がなされており、調査の結果、屋内のあらゆる用途の部屋とベランダにも観葉植物は飾られていた。屋外屋内、どちらかに限定されることがないようだ。様々な鉢サイズの需要、屋外屋内を問わない需要、このように需要ベースで見ていくと、観葉植物類の需要拡大はまだまだありそうだと思われる。

この度は観葉植物のなかから、ヤシ類に注目してみたい。ヤシ類について都内中央卸売市場の取り扱い状況について過去3年を月別に表したグラフは次のとおり。

月別には3〜7月頃までの流通が多いのだが、秋口にも動きがあるようだ。春先から初夏までの需要は、新年度に関わるものと夏場に向けたインテリア観葉としてさわさわと夏らしさをヤシに求めているのではないかと思われる。また、秋口の購入は引っ越しなどでインテリアの買い替えとともに観葉植物の購入が増加するのではと想像される。

ライフスタイルにぴったりそぐうのがヤシ類の需要ではないかと思われる。筆者の手元には『八丈島の園芸植物』(八丈島園芸植物図書編集委員会編・八丈町より発行・2001年)という本があるのだが、観葉植物としてのヤシ類の歴史を垣間見ることができる。この本には、戦後すぐに八丈島のヤシ、とりわけ大正年間に導入済みであった「フェニックス・ロベレニー」の人気が高まったとある。

詳細はその本に当たっていただくとして、社会全体としては、平成年間をとおしてのヤシ類といえば、空気浄化機能などの機能性を売りにしてしっかりした提案がなされてきて、令和の今があるのかなと思う。令和になり、このところ昭和レトロブームが若年層に見られることから、若年層にもヤシを飾ってみたい、「フェニックス・ロベレニー」をベランダに飾りたい、そんな流行が迫っていると推測され、潜在顧客が相当数いると思われる。

最後に、本稿でご紹介したアンケート調査によれば、「虫が出るなら買わない」という回答者が潜在顧客層の31%を占めている。この点に関しては、どうぞご勘案をお願いしたいところだ。

著者プロフィール

桐生 進(きりゅう・すすむ)
株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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