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イチゴのジャストインタイム生産を実現する 生育センシングシステムを開発

公開日:2022.9.20

工業製品の生産では「必要なものを、必要な時に、必要な数だけ作る」という『ジャストインタイム生産』が取り組まれていますが、農業生産では栽培環境を制御する技術が普及しているとはいえ、未だジャストインタイム生産が確立されているとは言えません。農研機構農業の研究グループはイチゴのジャストインタイム生産を確立すべく、生育センシングシステムの開発を進めています。

イチゴは日本でトマト、キュウリと並んで市場規模の大きな農産物ですが、クリスマスから年末年始をピークに年間を通じて需要は大きく変動し、それに応じて取引価格も変化します。イチゴ生産では、作型の選択や定植日の調節によって需要が高まる時期に出荷のピークを合わせることが試みられていますが、栽培環境の管理などでは、生産者の経験や勘に依存しており、ジャストインタイム生産が実現しているわけではありません。

イラスト/坂木浩子

イチゴのジャストインタイム生産を実現するには、果実の収穫日を正確に予測することが求められます。そのためには果実の発育が始まる開花日、果実の発育速度に影響する温度といった生育情報が必要なことから、研究グループはイチゴ群落の画像を自動で収集して、収穫日の予測に必要な生育情報を評価する生育センシングシステムを開発しました。

蕾の形成から花弁が落ちるまでの開花の状態を多段階に分けて学習させた開花認識AIが組み込まれており、自動撮影した画像から88.8%という高い精度で開花を認識できるようになっています。人為的に気象を制御した環境下で試した45の花について、開花日を誤差±1日以内で特定できることが確かめられています。

今後はハウスでの栽培試験を経て、実際のイチゴ生産で利用できるジャストインタイム生産システムの構築を勧められることになっていますから、近い将来、生産者の技術に依存せずともイチゴの需要が高まる時期に出荷の最盛期を合わせられるようになるでしょう。

文:斉藤勝司

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