HOME 読みもの アグリニュース 栄養素が多すぎる環境では、植物は根毛の形成を抑えることを確認 アグリニュース 栄養素が多すぎる環境では、植物は根毛の形成を抑えることを確認 公開日:2022.10.7 更新日: 2022.10.10 生育に必要な栄養素を吸収するため、栄養素が乏しい環境では植物は根から細い根毛を伸ばして、表面積を大きくすることで土壌から効率的に栄養を吸収しようとします。ただし、近年では化学肥料が容易に入手できるようになったことで、過剰施肥によって栄養を豊富に含む土壌である場合が多くなっていますが、栄養素を豊富に含む土壌で生育した場合の植物の反応に関する情報は多くありません。 そこで理化学研究所と奈良先端科学技術大学院大学の研究グループは、モデル植物のシロイヌナズナを用いて過剰な栄養素にさらされた時の植物の反応を調べる研究に取り組みました。植物の栽培に使われるMS培地を用いて、栄養素が通常の2分の1になるよう薄めた培地を比較対照として、栄養素が2倍になるようにした培地で栽培シロイヌナズナを比較しました。 その結果、比較対象では通常と同じように根毛が形成されたのに対して、栄養素が2倍の培地のシロイヌナズナはほとんど根毛を形成しませんでした。 イラスト/坂木浩子 根毛の成長が抑えられるメカニズムを明らかにしようと、すでに知られている根毛の成長抑制因子のGTL1とDF1をともに失った株(二重欠損変異株)を栄養素が2倍の培地で栽培したところ、根毛の成長抑制が機能せずに異常な根毛が形成されることが分かりました。この結果からGTL1、DF1が働くことで栄養素が豊富な土壌では必要のない根毛が形成されないと考えられました。 前述したように化学肥料を簡単に入手できる以上、農地に含まれる栄養素は過剰になりがちです。栄養素が乏しい環境でも育つ品種の育成も重要ですが、同時に栄養素を豊富に含む農地でも健全に生育できる農作物が求められるようになるかもしれません。そのため今回の研究で得られた成果を、今後、農地でも確かめ、幅広い環境で生育できる品種の育成につなげていくことが期待されています。 文:斉藤勝司 この記事をシェア 関連記事 2024.4.6 第6回 獣がいフォーラム 「市民の力で変わる 獣がい対策への新しいアプローチ」レポート(後編) 去る3月2日、表題のフォーラムが開催された。前編で紹介した基調講演に続いて行われ […] 獣がいフォーラム獣害 2024.4.5 第6回 獣がいフォーラム 「市民の力で変わる 獣がい対策への新しいアプローチ」レポート(前編) 生産者が丹精を込めて栽培しても、収穫前に野生動物に農作物を食べられては、すべての […] 獣害ヒグマ対策獣がいフォーラム 2024.4.4 第39回花卉懇談会フォーラム~新しい園芸植物の伝え方・使い方・作り方~ 2024年2月23日、表題のフォーラムが東京農業大学世田谷キャンパスにおいて開催 […]