農耕と園藝 online カルチべ

生産から流通まで、
農家によりそうWEBサイト

お役立ちリンク集~カルチペディア~
  • HOME
  • 読みもの
  • カルチベニュース
  • 第37回 花卉懇談会セミナー 「ポストコロナの時代に向けて」 〜ステイホームで生まれた暮らしの変化 その需要をとらえる〜
カルチベニュース

第37回 花卉懇談会セミナー 「ポストコロナの時代に向けて」 〜ステイホームで生まれた暮らしの変化 その需要をとらえる〜

公開日:2022.9.14

去る2022年7月23日、表題のセミナーが開催されました。新型コロナウイルス感染拡大の影響から今回もZOOMによるリモート開催となりましたが、65名が参加。コロナ禍による植物ニーズの変遷と、生産からの取り組みについて、2人の演者から紹介がありました。

住まいにとっての庭・緑・花
「家と庭」は、緑と花を活ける至高の器である。

住友林業緑化株式会社 執行役員 後藤遵誠氏

コロナ禍拡大によりテレワークが増えたため、住宅に求める条件にも変化が生じました。「広いリビングがほしくなった」、「日当たりの良い住宅がほしくなった」などという意見の他、目立ったのは「庭がほしくなった」、「仕事用スペースがほしくなった」という意見です。

今回は、当社のいくつかの緑化事業のなかから「暮らしの中の「もうひとつの森」住宅緑化事業」、とくに「美しい街並み」を作ることについてお話しします。

緑のメイクアップとして庭に「美しい街並み」を作るポイントは、「シンボルツリー」、「サブツリー」、「サイドツリー」、「ブラインドツリー」、「低木」、「灌木・下草類」の6種類の緑でこれらを意識して構成すると「美しい街並み」を実現できます。

まず、建物の高さとバランスに配慮した「シンボルツリー」となる1本の大きめの主木を植え、シンボルツリーが映えるように複数の「サブツリー」を配置します。サブツリーにはソヨゴなどがお勧めです。次に「サイドツリー」ですが、これは建物両サイドにはエアコンの室外機など、見られたくないものが多いためそれを効果的に隠す役割を果たしてくれるもので、常緑樹が良いでしょう。「ブラインドツリー」は、視線を遮るためのもの。室内で座った位置、窓辺に立った位置から配置や樹高を検討してみましょう。お勧め品目はオリーブなど。「低木類」は目線を下へ向けた位置に配置するもので、花、実、紅葉を楽しめるものがお勧めです。ドウダンツツジ、アジサイ、ユキヤナギが良いでしょう。最後は「灌木・下草類」ですが、これらは建物の基礎部分を緑で隠す役割で、大地に根ざした景色を演出してくれ、全体的な落ち着き、安定感が生まれます。

室内でも植物の提案はたくさんできます。新型コロナウイルス拡大の影響でステイホームが多くなり、緑を楽しむという傾向にあるため、需要は高まっています。天窓を作れば陽が当たる植物にとっては絶好の環境ですし、ポット類はインテリアとの関連が深いので、統一感の出るように小さなポット類を水回りに置くと楽しめます。

庭木の人気種はと言うと、高木・中木では、人気順にアオダモ、イロハモミジ、シラカシ、ソヨゴ、ヤマボウシとなっています。生垣ではマサキ、シラカシ、トキワマンサク、プリペット、レッドロビン。低木では、サツキツツジ、ヒラドツツジ、シルバープリペット、アベリア類。下草類では、タマリュウ、フッキソウ、フイリヤブラン、クリスマスローズとなっています。

これからニーズが高まりそうなものは、軽やかな常緑樹、花・実・銀葉、鮮やかで管理が簡単な植物などではないでしょうか。ハイノキ、フェイジョア、アベリアホープレイズ、アベリアカレイドスコープ、オタフクナンテン、リシマキアなどが挙げられます。

家と庭は緑と花にとって至高の器であり、建蔽率に従うと半分は庭になります。半分のスペースにどうやって緑と花を提案していくか? 圃場から植物を運び、家と庭に植えるのが当社の仕事です。これは、植物が運び出された圃場に生産者が新しい植物を植える=森作り、と同じことが家と圃場で展開できているというわけです。これこそが今、当社が目指している「サステイナブル」であると言えるでしょう。

他にはない! 大倉園芸にそれはある!
〜大倉園芸の変遷とコロナ禍における園芸、そしてこれから〜

有限会社大倉園芸 前代表取締役社長 戸倉政敏氏

千葉県九十九里にある大倉園芸は1972(昭和47)年、ガラス温室100坪で観葉植物の生産から創業し、各年代で時代に沿った新しいアイデアを考案・実現しながら事業拡大を続け、今年で50周年を迎えました。50年という歴史のなか、とくに紆余曲折のあった末のベアルートの国産化は大きな意義があったと考えています。

現在では約500種の植物を取り扱っており、メインの植物は、エキナセア、ホスタ、ヘメロカリス、アスチルベ、ブルンネラ、アネモネ、ガザニア、ダリア、アークトチス、ヒューケラ、多肉植物など実に多種多様です。

コロナ禍を含む近年6ヵ年(2016〜2021年度)の当社の売り上げ額の推移ですが、新型コロナウイルス感染拡大となった2020年度以降、売り上げを伸ばしています。飲食店は軒並み休業となりましたが、スーパーやホームセンターなどは営業していたこと、在宅勤務のステイホーム効果、ECサイトの利用などの理由が挙げられます。

とくに感じたのは、男性客が伸びたのでは? という点で、その理由として、女性客が「可愛い」と感じる感性とは違い、コーデックスの1品ものなど男好みの園芸と、ステイホームの影響もあったのではないかと推測されます。ただ、ウクライナ問題により原材料価格が上がってきているため、2023年春頃から売り上げは厳しくなるのでは、と考えているところです。生産計画の再考が必要でしょう。

当社の販売先割合についてですが、量販店・通信・委託販売を含めた3つのルートで76%を占めます。その他、種苗会社、園芸店は代理店経由です。市場販売は18%ですが、そのうちの7割が予約販売、3割がセリとなっています。生産者の数は右肩下がりで、この先、生産量が伸びるのは考えにくいため、前もっての予約や発注となっていくのではないでしょうか。市場はセリよりも予約販売となり、セリは形骸化していくのではと思います。

当社では年2回、各お店のPOSの消化率データを見て販売動向を分析しています。消化率が低いものは翌年から生産を減らしていくのです。生産は勘に頼ってはいけません。プロダクトアウトだけではなく、マーケットインを考えて生産しなければならないのです。そうしたデータをもとに、バイヤーなどとともに翌年の生産計画を立てています。

最後に、今後避けて通れないのは脱炭素への取り組みです。当社はと言うと何もできていません。ある大手メーカーに問い合わせてみましたが、現在のポットを環境にやさしい生分解性のポットにすると10倍の価格になり、使うには現実的ではありません。当社も努力が必要ですが、メーカーにも取り組んでいただき、皆様にお知恵をお借りしたいと考えています。

 

※次回第38回花卉懇談会フォーラムは「不透明な時代に考える 地域からの発信」と題し、2023年2月18日(土曜日)13時30分より開催を予定しています。東京農業大学世田谷キャンパスでの開催を準備中ですが、社会状況によってはオンライン開催となる場合もあります。

 

 

取材協力・資料提供/花卉懇談会事務局
取材・文/丸山 純

この記事をシェア