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【関東 切り花】パンパスグラスについて

公開日:2022.9.12
(画像/photolibrary(https://www.photolibrary.jp/))

この時期、装飾や大型展示で目を引くのが毛ばたきのような見た目のパンパスグラスだ。

流通するサイズは長さ1mぐらいだが、実際には2m以上にも生長する。枝物などでもそうだが、装飾での使いやすさ、現実的輸送性からすると1.2mぐらいまでの長さの商品が出回り量としては多くなる。

生長段階では、初夏から夏にかけてタケノコのように茎が伸びる。茎の先端に穂が隠れていて、むいて穂を出して出荷されるケースが多いようだ。出穂を待つよりもむいたほうが発色が美しいからである。

穂の色は、ビロードというのか、艶があってゴールドを帯びた個体、真っ白な個体、ややピンクがかった個体の3種類がある。このうち、最初に挙げたゴールドを帯びた個体の黄金色のものが圧倒的に数多く流通する。

さらに流通商品としては、当年収穫したフレッシュな状態と、事前に収穫し、ドライに加工した商品とがある。フレッシュな状態の商品は8〜9月に最盛期を迎え、流通の大部分量を占める。また、穂をカラフルに染めた商品もある。ついでながら鉢物での流通もある。

さて、ここ1〜2年でパンパスグラスの人気は急騰している。図は大田花きにおけるパンパス類(フレッシュ、ドライなど合算)の月別取り扱い本数と単価だ。

本数を見ていただくと、2020〜2021年にかけて増加していることがわかる。8〜9月頃、都内生花店を見て回ると、多くのお店で目にすることができる。店舗内を秋めいた雰囲気にし、色の濃い秋物との相性も良いからだ。

また、パンパスグラスの人気は日本だけではない。世界的にも人気の商品であると考えている。海外の花き園芸関係のニュース記事では、しばしばガーデン用のパンパスグラスが取り上げられており、コンテストでパンパスグラスの鉢物が入賞したことを目にした。この傾向は2021年頃から見られる。

パンパスグラスを支持する感性的なトレンドには国境がないと思われる。また、人気が高く、需要の多い植物は切り花と鉢物とであまり差がなくなってきており、ガーデニングで人気のある商品のうち、ある程度長さの確保できる商品は切り花にも取り入れられるという事例が増えている。

ところで、流通しているパンパスグラスを手にとってもらうと、装飾用を前提としたボリュームのある商品が主体であることがわかる。茎は太く、穂はできるだけ大きく、という状態だ。

秋の風情ある商材としてはススキがあり、ススキのようにご自宅にもパンパスグラスを飾りたいとする需要もあるが、茎が細身で穂のサイズ感がちょうどいいご自宅用のパンパスグラスの流通量は少ないようだ。今後は家庭用のパンパスグラスという需要を考えてゆくべきだろうと思われる。

しかし、生産者にとって家庭用を増やすことは簡単ではないだろう。パンパスグラスの収穫は大変だからだ。葉にのこぎり状のギザギザがあるため、8〜9月というまだまだ暑い日が続く最中でも全身を防護した上でないと収穫作業が難しいのだ。

とは言え、ターゲットとしては頭の片隅に入れておいていただきたいと思う。

著者プロフィール

桐生 進(きりゅう・すすむ)
株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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