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温暖化が進行しても確実に花を咲かせるには……  リンゴなどの果樹の花芽が休眠から目覚める仕組みを解明

公開日:2022.11.16

「生命の設計図」と呼ばれることからも分かる通り、DNAに記された遺伝情報によって生物の特徴が決まります。ただし、遺伝情報が働くかどうかには、後天的にDNAに生じる化学的な変化の影響を受けます。

例えば、リンゴなどのバラ科に属する落葉果樹は、翌年の春に咲く花の素を前年の夏に作ったのち、休眠して厳しい冬を越します。一定の低温を経験すると花芽は休眠から目覚めて、開花の準備を始めるのですが、こうした花芽の休眠の制御にDNAが巻き取られるヒストンというタンパク質の化学的な変化が関わっていることが知られています。ただし、どのように関わるかまでは明らかになっていなかったことから、京都大学大学院農学研究科の研究グループは、リンゴ花芽の休眠と開花にヒストンの化学的変化がどのように関わるかを解き明かす研究に取り組みました。

イラスト/坂木浩子

その結果、H3K4me3と呼ばれるヒストンの変化が、花芽の休眠や発芽を制御する「DAM」や「FLC-like」と呼ばれるタンパク質の合成に関わることが分かりました。また、春に暖かくなるにつれて発芽を促進するとされる植物ホルモンなどもH3K4me3によって活性化されることも判明し、果樹の花が開花するのにH3K4me3が重要な役割を担っていることが明らかになりました。

現在、地球温暖化が果樹の休眠や開花に影響を及ぼしていると指摘されています。今回の発見は今のところ基礎的な植物学の研究成果にとどまっていますが、休眠していた花芽が開花に向かうメカニズムが明らかになったのですから、温暖化が進行しても確実に花芽が形成され、開花する新品種の育成や栽培技術が確立するのに役立てられるでしょう。

文:斉藤勝司

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