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受粉が必要な農作物の省力栽培に向けて  野生の昆虫による花粉媒介の実態を解明

公開日:2022.11.5 更新日: 2022.11.16

受粉が必要な果樹や果菜類の栽培では、人工授粉が行われたり、花粉を媒介するミツバチの巣箱が導入されたりしていますが、露地栽培の場合、野生の昆虫(花粉媒介昆虫)も受粉に貢献していると考えられます。しかし、その実態はほとんど分かっておらず、どの程度、受粉に役立っているかは明らかになっていませんでした。

例えば、果樹のカキは雄花から運ばれた花粉が雌花で受粉することで着果率が向上します。そのためにセイヨウミツバチが利用されることがありますが、野生の花粉媒介昆虫による貢献次第ではコストをかけてセイヨウミツバチを導入しなくてもいいかもしれません。
そのため農研機構は野生の花粉媒介昆虫による受粉の実態を明らかにするための調査手法を開発し、令和4年月3日に「果樹・果菜類の受粉を助ける花粉媒介昆虫調査マニュアル増補改訂版」として公表しているのですが、島根県農業技術センター、森林総合研究所と共同で、東北から九州にかけてカキの花に訪れる昆虫の調査を行いました。

イラスト/坂木浩子

その結果、野生のコマルハナバチが主要な訪花昆虫であり、甘柿品種の「富有」では、コマルハナバチが一度でも雄花に訪花すると着果率が大幅に向上し、複数回の訪花によってさらに着果率が高まることが判明。富有を安定して生産する上でコマルハナバチの訪花が重要な役割を果たしていることが明らかになりました。

野生のコマルハナバチをうまく利用できれば、セイヨウミツバチを導入しなくてもよくなる可能性があります。ただし、どれだけコマルハナバチに頼れるかは、果樹園の立地環境なども関わってきます。今後は個々の果樹園にマニュアルを利用してもらい、野生の花粉媒介昆虫の訪花状況を調べて、地域単位でセイヨウミツバチの適正な導入巣箱数の把握に取り組んでいく予定です。

文:斉藤勝司

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