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【関東 鉢物】キクの鉢物について

公開日:2022.10.27
(画像/photolibrary(https://www.photolibrary.jp/))

キクは切り花では、出荷量圧倒的1位の大品目で周年生産供給されるが、鉢物では秋の季節アイテムとしてのポジションである。様々な仕立て・品種が流通しているが、大別するなら2つの商品群となる。

1つめは、小さな花が多数集まった、ややドーム型にこんもりとした形となる商品群で、ガーデンマムと呼ばれるような商品群や、歴史あるボサギクなどが該当する。

2つめは、腋芽を整理して中輪、大輪の花をつけた商品群だ。切り花でも見かけるようなポンポンマムや「アナスタシア」のような種類の品種と仕立てが該当する。

これらのうち、数多く流通するのは丸くたくさんの花が多数ついた、ドーム型、それもガーデンマムではないだろうか。ピンクや赤やオレンジで、花も小輪とはいえ八重咲もあり、とてもボリューミーだ。ボサギクも日本の和風な風景にマッチする素敵な商品だ。

キクの鉢物について、東京都中央卸売市場の統計データを下記に示す。

8月から流通鉢数が増えて、9〜10月にピークを迎える。秋の商品として安定した評価を受けていることが窺える。

とはいえ、消費者は移り気だ。その変化する嗜好に合わせる提案をキクの鉢物にもどうか?と思い、いくつか申し上げたい。

現在の花きトレンドには、ナチュラル感の演出という潮流がある。まず、自然な描写や印象を与える素材が評価される。次に、バーティカル(直線的)なフォルム。それから一億総インスタグラマーなので、素材を撮影したときの“映え”に基づく配色も重要だ。色で言えばブルー系。これらの要素を持っているかどうか、これは切り花だけでなく、鉢物にも重要なことだ。

キクで演出できるナチュラル感とはなんだろうか。それはきっと紅葉だろう。葉がきれいに紅葉するキクはないだろうか。一定量供給されることを期待したい。

次にバーティカルに伸びる商品だ。直線的でたおやかな素材というのが理想だが、伸びることと、たおやかさを鉢物で同時に満たすのは難しいかもしれない。よって、最優先はバーティカルだろうか。昔の記憶で恐縮だが、デルフィマムという商品を見たことがある。スプレーマムで上から下まで花がついたような形だ。

最後に色のブルーだ。青みと表現したほうが適切かもしれない。流通するガーデンマムを大田市場内で確認すると、青みがかった色合いの品種はないようだ。キクに青はないのだから当然だ、と回答される。そこで、同時期に流通する鉢物の、青紫色の宿根アスターの鉢物に着目。これらと一緒にマーケティングしてはどうだろうか。社会でこれだけ青みが流行っているのだから、可能ならあわせてご紹介するということがあってもいいのではないだろうか。

今回はちょっと実現が難しいことを提案してみた。

著者プロフィール

桐生 進(きりゅう・すすむ)
株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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