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やはり重要だった! 夜行性ポリネーターの実態解明

公開日:2022.12.19

花粉を運ぶ昆虫などのポリネーター(送粉者)は、野生植物だけでなく作物の栽培にとっても重要な役割を果たしています。ところが、その大切なポリネーターが減少しているという報告が、ここ数十年で増えています。

これまでの研究で、とくに注目されてきたポリネーターは、マルハナバチやミツバチなどでした。実際には、ハチ類の他にも多くの昆虫がポリネーターとして働いているにもかかわらず、とくに夜行性のポリネーターなどの実態は、あまり調べられてこなかったのです。その主な原因として、夜間の観察が難しいことが挙げられます。

このほど、オーフス大学(デンマーク)などの研究グループは、アカツメクサの花には日中はマルハナバチが訪花するものの、夜間はヤガ科のガが訪花していることを発見しました。これは「アカツメクサのポリネーターはハチだけ」という100年来の通説を覆す、画期的な成果となりました。

イラスト/坂木浩子

この研究では、2021年6月~8月に、15台のタイムラプスカメラを用いて、スイスアルプスの草原に生育するアカツメクサのポリネーターを開花期に昼夜にわたって追跡調査しました。これらのカメラで、合計36個の花が撮影されました。

その結果、主にヤガ科を中心とするガ類が、全訪花回数の34%に達することがわかりました。マルハナバチは61%でした。家畜の飼料として重要な作物でもあるアカツメクサの受粉には、夜間に活動するガが重要な役割を果たしていたわけです。

この研究により、タイムラプスカメラの利用は、毎日観察するのが難しい場所でのモニタリングに有効であることが確かめられました。この方法を応用すれば、アカツメクサ以外の植物でも研究が進み、そして夜行性のポリネーターによる送受粉の重要性に対する理解も深まると期待されます。

文/保谷彰彦

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