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ただのフタじゃなかった!! ウツボカズラのバネ仕掛けを解明

公開日:2022.12.15

食虫植物のウツボカズラは、カップ状の捕虫袋で昆虫などを捕獲します。蜜に誘引された昆虫たちは補虫袋に集まりますが、補虫袋の口の部分や内壁は滑りやすいので、消化液が満たされたカップ内に落ちやすくなっています。

このように、ウツボカズラの補虫袋は動かない落とし穴として働きます。そして、捕虫袋には、種によって形状の異なるフタ状の葉があります。このフタは雨水で消化液が薄まるのを防ぐためのものであり、ふつう捕獲には関わっていないと考えられてきました。

 

イラスト/坂木浩子

このほど、ブリストル大学(イギリス)の研究者たちは、ウツボカズラの1種ネペンテス・グラシリスでは、フタに当たった雨粒のエネルギーを利用して、フタの裏側にいるアリなどの昆虫をカップ内に弾き飛ばすことを発見しました。

グラシリスは、ボルネオ島、スラウェシ島、スマトラ島、カンボジア、半島マレーシア、シンガポール、タイなどに広く分布する食虫植物で、観賞用としても親しまれています。

詳細な画像解析により、グラシリスでは、フタ状の葉のつけ根部分から捕虫袋の背側に沿ってバネ仕掛けの部分が縦長についていることがわかりました。このようなバネ仕掛けのフタは、降り注ぐ雨粒が当たったときに、下方向には勢いよく動きますが、上方向には動きにくく、さらに左右によじれることがないことがわかりました。

この巧妙なバネ仕掛けによって、グラシリスは、雨粒のエネルギーをうまく利用して、フタが非常に速く下方向に動くようになり、フタの裏側で雨宿りなどしている昆虫たちをカップ内に勢いよく弾き飛ばす働きがあったのです。

このようなバネ仕掛けは、雨粒からエネルギーを取りだすための新しい装置のヒントになるかもしれないと研究グループでは考えています。

文/保谷彰彦

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