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【関東 切り花】シンビジウム

公開日:2022.12.14
(画像/photolibrary(https://www.photolibrary.jp/))

花きのトレンドの遷移としては、世界を席巻しているナチュラル志向をベースに、デザインでも素材品種においても2013年から2027年にかけてよりナチュラルに見えるように発展していると弊社では見ている。2013年前後はナチュラルという表現がまだまだ馴染みがないものだった。それが瞬く間に草花類、グラミネ類、枝物類の増加・多様化が進み、具現化していった。

今月はシンビジウムの切り花を取り上げたい。下図は大田花きにおける2019~2021年のシンビジウム切り花の月別の取り扱い本数と単価を示すグラフだ。

シンビジウムには輸入品と国産とがあり、以前は3:7であったが、現在では1:9ぐらいの割合となっている。国産は11月頃から5月頃までの流通で12~3月までが多く、輸入品は6~10月に多く出回る。業務所需要やパーソナルギフトでのご利用が多い。さらに年末から年明けについてはホームユース用でも多く利用いただく商品だ。昨今は海外産の大幅な減少と国産の微減などから総流通本数は減少傾向にある。

一方需要面では、その日持ち性の高さとインテリアとの相性から、ホームユースでの評価が高まっていると思われる。また、家庭向け花瓶の形状が、口のすぼまる筒状もしくは壺のような形状が増え、口の広がるラッパ型が減少しているからと思われるが、前者の花瓶には茎のすらりとした素材が飾りやすいこともある。枝物のような従来は飾り方が難しいとされていた素材であっても、花瓶の口が広がっていない分だけ挿せば挿したなりに形が決まることから、枝物も家庭で飾りやすくなった。かように昨今のホームユース増加と人気花材と花瓶の形状には関係性があると思われる。

先日、総務省の社会生活基本調査(2021年)が発表され、そのデータを見ると華道をたしなむと回答した人が5年前の前回調査時点と比べ30%減少していると推計されていた。前述のように、花瓶との相性を頼りに花を飾る人が増えていることから、華道目線での飾り方を知らない人は多い。提案はきっと新鮮で受け入れられるだろうからシンビジウムのような直線的な花材の飾り方に変化の提案がほしい。

シンビジウムの販売チャネルについては、昨今増加しているEコマースでもサブスクリプション型の展開にぴったりだろう。すらりとした草姿で容積をあまり必要としない形状のためだ。また高額な商品は従来サブスクには向かないと思われていたが、枝物専門のサブスクもあること、それからサービス自体を高齢の方も利用するようになっているため、実は価格帯や販売先は相当拡大している。よってシンビジウムのこの分野への展開は増えるものと思われる。日持ち性が抜群であることはホームユース市場活性化にとってもありがたい。

期待することとしては、3月以降の季咲き商品の提供だろう。エネルギーを極力かけないSDGs商品の提案が花き業界全体では未発達分野だ。様々な業界では商品化が進んでいるだけに、花き業界での展開を検討願いたい。

著者プロフィール

桐生 進(きりゅう・すすむ)
株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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