HOME 読みもの 新品種発表会 2022年秋季 タキイ研究農場見学会リポート【トマト編】 新品種発表会 2022年秋季 タキイ研究農場見学会リポート【トマト編】 公開日:2022.12.28 2022年11月17日に滋賀県湖南市にあるタキイ種苗(株)研究農場にて、タキイ研究農場見学会が開催された。この見学会では、同社の野菜品種や花き品種を展示し、実際の立毛の様子を観察しながら、品種の特徴などの説明を聞くことができた。また、実際の栽培のヒントを同社のブリーダーや営業担当者と検討している場面も見られた。本誌では品目別に分けてお伝えする。今回はトマト編。 大玉トマトの育種について トマトのブリーダーである高木さんに、大玉トマトの育種についてお話を聞いた。 輸送性にフォーカスした育種 高木さん:「従来のトマトは、『食味が良ければ』よかったのですが、今は、棚持ち性や輸送中の事故がないといったところが育種のコンセプトとしては重要になってきています。なので、果実はしっかりと固く、収穫しても日持ちがする。従来の桃太郎であると、食味が良い分柔らかく、比較的傷みもおきやすいのです。そういった流通上のリスクをなるべく減らした品種というのが主流になっています。大玉に限らず、ミニトマトにもその育種の方向性が求められています。例えば、パックの中や箱の中で果実が割れてしまうと、そこから果汁が出てしまいカビが生える。そうなると、たとえばミニトマトのパック約250gのすべてが、返品になります。そういったトラブルを減らす育種を目標としています」。 トマトの食味について 高木さん:「棚持ち性や裂果しにくいトマトを追求していくと、ヨーロッパのトマトになります。ヨーロッパでは、『野菜』として扱われているので味を求めていない傾向があり、トマトは味つけをして食べるのが一般的です。その一方で、日本では、『フルーツ』であることをトマトに求めています。なので、棚持ち性や裂果のしにくさだけを追い求めることは、日本の食文化に合いません。なので、TTM-170(桃太郎みなみ:農耕と園芸2022年冬号、P9~で産地紹介)のようにできるだけ日本の食に合うように育種しました」。 トマトの色づきについて 高木さん:「従来の果実の色。トマトはショルダーグリーンになりツートンカラーになります。これがあると色回り、全体に濃い赤になるまでに時間がかかります。果頂部から色が回ってきて最後に肩の部分に色が回ってきます。夏の暑い時期になると、果頂部が赤くなっているときに収穫しないと、肩の部分が赤くなるまで待っていると、果頂部付近が過熟になってしまう。また、肩の緑が濃くなっていって直射日光が当たると、色がつかなくなります。それを『黄変果』といいますが、5月の連休あたりから、近年はものすごく暑くなるので、同時期に出荷になるトマトの色回りが悪い果実というのが多かったのです。その結果、『等級が下がる』という問題が実際におきます。したがって、全体に色が均一にまわり、色ムラになりにくいように育種しています。 売り場を見ると、トマトは大体ヘタを下にして売られていますから、肩のところが見にくいのです。良い色だなと思って、トマトを手に持ちひっくり返すと、肩の部分が青かった場合、がっかりさせてしまうので、色まわり良く、きれいだねと思われるように育種しています」。 桃太郎ホープの作り易さをフレームアップしたトマト試験交配品種 TTM-178 トマト黄化葉巻病耐病性、硬球、高秀品率で冬春栽培に好適。肥大力にすぐれ黄変化に強い。 特性:果実は硬く、玉揃い良好、厳寒期の秀品率が高い。長期栽培に必要なスタミナがあり、着果性にも優れる。早生性は、桃太郎ホープと比較してやや遅い。 ミニトマトの育種について 高木さん:「ミニトマトも大玉トマトの育種課題は基本同じです。流通での課題は『裂果』が大きいです。ミニトマトは大玉トマトよりは美味しいものを求められます。完熟した状態での出荷が当たり前になっています。輸送性を重視するあまり果実を固くしてしまうと、食感に影響しますので、固さと裂果のしにくさのバランスを見極めています。 ミニトマトの果実が丸い形になればなるほど、ゼリー部が多くなります。ゼリーというのは、私たちトマトの育種をするものからしたら厄介であります。水分ですので、時間がたつにつれブヨブヨになってきて、多いと日持ちが悪くなります。反面、ゼリー部の大きさで種の数がほぼ決まりますから、種を採るためにはゼリー部は大きい方がいいのです。果実自体の壁を、私たちは果肉の部分と言っていますが、暑くすることで日持ち性を向上させています」。 TTM-174 千恋(ちこ) なつめ型にすると、ゼリー部分が少なくなり、果肉の部分が増える。軟化・裂果のクレームや、輸送時のトラブルが少ない。丸いミニトマトであると、かじった時にゼリーが飛び出てくる場合がるが、なつめ型の千恋であるとかじっても汁だれしない。また、ヘタがとりやすく、果実をしっかりと洗うことができることから、幼稚園や保育園に通う子どものためにお弁当作りをするお母さんに支持されている。へたを取って出荷することも考えられる。生産面でも、果ぞろえ揃えがよく、果重が15~20gとなり、高単価で取引されることが期待できる。 取材協力/タキイ種苗(株)広報出版部 取材/御園英伸 この記事をシェア 関連記事 2024.1.8 トキタ種苗大利根研究農場オープンデー2023 埼玉県加須市にあるトキタ種苗大利根研究農場にて、2023年11月16~17日にト […] 新品種野菜コマツナトマトキュウリトキタ種苗トキタ種苗大利根研究農場白ナス 2024.1.5 フラワートライアルジャパン2023秋 (株)ハクサン展示会リポート 去る9月26~28日の3日間、「フラワートライアルジャパン2023秋」が長野県と […] ベリースペシャルフラワートライアルジャパン2023秋ドゥ モレルハクサンアブソリュネペタプティ ムーランキャッツパジャマビデンスキャンプファイヤーオステオスペルマムキャンディフィールズシクラメンイリュージア 2024.1.4 フラワートライアルジャパン2023秋 カネコ種苗(株)展示会リポート 去る9月26~28日の3日間、「フラワートライアルジャパン2023秋」が長野県と […] ペンタスダリアカネコ種苗フラワートライアルジャパン2023秋サマースターミスティックノワールフロックスチアフルポンポン