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2022年秋季 タキイ研究農場見学会リポート【トマト台木編】

公開日:2022.12.28

2022年11月17日に滋賀県湖南市にあるタキイ種苗(株)研究農場にて、タキイ研究農場見学会が開催された。品目別に分けてお伝えする今回は、トマト台木編。

トマト台木の必要性

トマト台木の必要性について、同社トマトブリーダーの高木さんにお聞きした。

高木さん:「地球規模の温暖化により、夏場すごく暑くなってきている。穂木、すなわち収穫する側のトマト品種を様々な気象条件に合わせて育種をするというのは、そこに関与する遺伝子が無数にあるので、なかなか難しい作業です。耐暑性を持たせるためには、穂木と台木の特性を分業・役割分担させた方が解決への近道です。

そこで、台木にはどのような役割をさせるかというと、⓵高温時期でもしっかりと根を張り穂木部を成育せさること、②病害虫にも抵抗性を持つこと、この2つの大切な機能を分担せさます。根張りがいいことで高温期の草勢が落ちない理由は、一般的に根は、『ヨコに張る力』と、『深く奥に伸びていく力』と、2つあります。高温時は地表面の温度も高くなり、地表面近くに張った根は死んでいってしまいます。一方で、定植してからの横張りの細かい根は、根付きの良さには大切になります。キングバリアは、定植時にヨコに広がってからタテに深く根が張っていくのです。本来、トマトの根付きが良いといわれるものは、横張りする根の事なのです。そのあとの、長期にわたって環境に左右されにくいのは、地中深く張るような太い根なのです。根の横張り性と縦張り性のバランスは非常に大事です。

高温になると問題になってくるのは青枯病です。ナス科植物にとって切っても切り離せない病気になります。日本全国で発生しており、細菌の量も質も、増えて行ったり強くなったりしています。従来の台木では耐病性が失われてしまっています。他方、青枯病に強い台木は、根張りがおとなしいものが多かった。そのような中でもキングバリアは根張りの良い台木です」。

高温期、35℃を超えると花粉が死んでしまうそうだ。そうならないためにも、根張りの良い台木を使い、水をしっかりと吸い上げさせれば、植物自体の温度も下がっていくので、花室を保つための対策の一手となるそうだ。

高木さん:「『みどりの食料システム戦略』で化学農薬の資料量をリスク換算で50%低減、化学肥料の使用量を30%低減することが2050年までの目標として掲げられています。そのような状況でも、しっかりと樹を作れるというのが、台木の力がますます大事になってると考えています。台木を変えることで、施肥量を落としても収量を落とさずに栽培できる、夏場の冷房も必要なくなる、設定温度もそんなに下げる必要もなくなるかもしれません」。

耐暑性はもちろん、省エネ、省資材費に対応した園芸を進めるにあたって、ますます高機能の台木の重要性が高まっていくのではないだろうか。

強青枯病耐病性と強勢を実現したトマト用台木 キングバリア

トマトの芯ぐされ果の被害は、夏場になって出やすいので、根張りの良いキングバリアを使うと、ホウ素欠乏のリスクも減るそうだ。

◎青枯病に強耐病性、かいよう病にも強い。土壌病害に幅広くすぐれた複合耐病性を持つ。

◎細根が多く、初期から草勢安定。追肥、潅水にしっかり反応。栽培中盤・後半も草勢を維持しやすい。土耕栽培から養液栽培まで、幅広い栽培方式に適応し、収量性・秀品性の向上に貢献できる。

複合耐病性の強勢台木!抜群のスタミナで長期栽培に向く! グリーンフォース

高温期、35℃を超えるとトマトの花粉が死んでしまうそうだ。そうならないためにも、根張りの良い台木を使い、水をしっかりと吸い上げさせれば、植物自体の温度も下がっていくので、花粉を保つための対策の一手となるそうだ。

◎トータル根量が多く、二次根もよく発生する強勢台木。

◎肥料や水への反応が早く、栽培期間中の萎れにも強い。

◎長期栽培や2本仕立て栽培に最適。

取材協力/タキイ種苗(株)広報出版部

取材/御園英伸

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