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【関東 切り花】オリエンタルユリにおける取り組みと動向

公開日:2022.12.27
(画像/photolibrary(https://www.photolibrary.jp/))

国内に流通するユリの切り花を本数シェアでざっくりと分けると、オリエンタルユリが70%、LAハイブリッドユリが15%、テッポウユリが15%という割合になる(東京都中央卸売市場2021年のデータより筆者が大まかに分類)。ユリ類では、オリエンタルユリのマーケットが最大となるわけだ。

オリエンタルユリは大輪の花をいくつもつけるため、冠婚葬祭・ギフト需要に応えてきた経緯がある。なかでも最近注目を集めているのが八重咲きタイプだ。幾重もの花弁を持ち、花も大きく、なおかつ日持ち性も高いため、用途は大いに広がる。とは言え、八重タイプのオリエンタルユリのシェアはまだ数%だ。

大田花きの取り扱い統計データ上では2021年度が2.7%であった。これでも前年から倍近く伸びている。オリエンタルユリの生産を行うには球根を調達してから植える必要があるため、球根の増殖には一定の年数がかかることことなどから、増加にしばしの年数がかかることになる。

また、供給数が限定されているため月によっての供給波動も大きい。仕入れたことのある小売店さんもまちまちなら、目にしたことのある消費者も限定的だ。それでも小売店のECサイトなどでも商品展開され、目にする機会が増えたことから、社会的な認知が進んでいるところだ。

球根供給の成長率が一定であれば、あと2年でオリエンタルユリにおける八重品種のシェアは10%を超える。一般的なシェア理論によれば、あるマーケットでのシェアが10%を超えると誰もが知る商品となるのでここ2年が八重をPRする正念場だ。

さて、昨今の切り花業界では「コンパクトサイズ」が大きなテーマとなっている。家庭での飾る環境や物流事情などからである。大輪の花でもコンパクト化については検討すべきテーマであり、オリエンタルユリの八重品種でも実はすでにこの取り組みが見られる。「美LILY7034」と書いて「ビリーナナマルサンヨン」と読む活動がそうだ。70cmで3〜4輪つきの八重オリエンタルを推奨するもので、家庭に飾ったときの草姿のバランスと輪数との釣り合いがすばらしいというのがこの規格であり、ブランドネームそのものだ。期待が持てる取り組みだ。

最後にユリとホームユースについて述べたい。ユリ業界における最近の興味深いプロモーションとしては、日蘭のユリ球根業者が資金提供をするリリープロモーションジャパンによるユリの使い方の新提案がある(参照HP:https://www.lily-promotion.jp/

サイトをご覧いただくと一目瞭然だが、ユリを様々な花と一緒に飾るデザイン提案を具体的に行っている。小花需要の拡大と浸透が著しいが、ユリのように花が大きいという理由で敬遠されてはたまらないからだ。また、ネットで「ユリ」、「花束」というワード検索を実施すると、ユリ単品のブーケばかりが検索結果として出てくる。つまりユリといえば単品での販売が想起されるのがまだまだ一般的だ。

写真/佐々木久満

消費者のイメージを変化させることで消費活性化をもたらすことを目標に、前述のプロモーションサイトではユリとドライフラワーとのアレンジ、ユリとグラミネ(イネ科のクサバナを花業界ではこのように呼ぶ)などの小花とのアレンジを提案している。

こちらのプロモーションサイトなどで皆さんの持つユリについての先入観を一新してほしいと思う。

著者プロフィール

桐生 進(きりゅう・すすむ)
株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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