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温暖化や猛暑に強い作物の育種に道 高温でも免疫力を高める方法を開発!!

公開日:2023.1.2 更新日: 2022.12.28

植物ホルモンの1つサリチル酸(SA)は、植物の防御において中心的な役割を果たします。たとえば、植物が病原体などに感染すると、SAの濃度が最大で7倍にもなるという報告があります。SA濃度が高まることにより、植物の免疫システムが強化され、病原体による攻撃をかわすことができるのです。

ところが、高温になると、植物はSAのレベルを上げることができなくなり、病原菌に対して無防備な状態になってしまいます。この現象は短期間の猛暑でも生じます。

イラスト/坂木浩子

このほど、ミシガン州立大学(アメリカ)などの研究グループは、気温が上昇しても植物のSAの生合成量の低下を防ぐ方法を開発しました。これは高温でも植物の免疫力を維持するのに役立つと期待されます。

この研究では「次世代シーケンシング」という新技術を活用して、温度を変化させたときに発現する遺伝子を網羅的に調べました。その結果、高温で「スイッチオフ」になる遺伝子の多くが、CBP60g遺伝子というマスター遺伝子によって制御されていることが判明したのです。このマスター遺伝子が高温になって機能を停止すると、SAの生合成が低下して、結果として高温下での植物の免疫力が低下してしまうわけです。

そこで研究グループは、CBP60g遺伝子をオンにしたままの変異型セイヨウアブラナを作出しました。すると、高温下でもSAが生合成されて、防御システムが維持され、病原体による攻撃を回避できることがわかったのです。他の作物にも、この方法を応用できれば、食糧危機の解決に貢献できると研究グループでは考えています。

 

文/保谷彰彦

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