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カルチべ市場動向

【関東 切り花】クリスマスローズ

公開日:2023.1.11
(画像/photolibrary(https://www.photolibrary.jp/))

今回は、年末から早春に開花するクリスマスローズ属の切り花について考えてみたい。

まずはここ4~5年の月別の流通動向をグラフからご覧いただこう。

大田花きにおけるクリスマスローズ属の月別取り扱い実績だ。2〜4月を最盛期として5月までの流通がしっかりとある。クリスマスのある12月はむしろ少ない。

古くから愛好家の間で育てられてきたがメジャーになったのは比較的最近で、ミレニアル世代の誕生と同時期だ。日本クリスマスローズ協会のHPからかいつまんで歴史をひもとくと、1998年に世界的に大ブレイクする出来事があり、同じく日本でもテレビで紹介されたことなどもきっかけとなり浸透したようだ。切り花としての流通も流行初期の90年代後半からあったと記憶している。

植物としての性質が堅強であったことも拡大に貢献している。屋外でよく育ち、病害などの心配も少なく庭ではこぼれ種で増えるからだ。

花の特徴としては、花びらに見える部分はガクであり、適切な切前で収穫すると大変長持ちする。ヨーロッパ原産だが、シュウメイギクのような風情があることから和風な場面にもよくあう。

デザイン的には個体間の色の違いや収穫時期による退色具合などが豊かな表情としてとらえられ、デザインに野趣を取り入れたい時にも利用される。

種類としては交配がたいへん盛んなので実際の品種数はわからないところだが、切り花としては50~60種が流通していると思われる(大田花きでの取り扱い実績データによる)。流通する花きの戸籍を管理するJFコードセンターで調べると、クリスマスローズ属は切り花、鉢物とを合計して300以上の種類が登録されている。切り花の場合は色名だけでの出荷やMIXでの出荷が非常に多いため、詳細は捉えがたい。流通する切り花の色目としては、白やグレイッシュピンクを多く見かける。茎の長さが20〜30cm程の商品が多いが、なかには大型種もある。グリーン系の花をつけ、茎が太く伸びたダイナミックでワイルドなタイプだ。小型の花もよく見ると、皆さんが想像される横向きないし、うつむきタイプばかりとは限らない。最近は上向きもあるのだ。

切り花では長らく切前や水揚げ方法についての情報が共有されず、90年代にブレイクしてからの5〜6年程は可愛いけど水揚げが難しい花というイメージが定着したように思う。その後、切前や前処理、品種などの改善、情報の共有が進み、現在の流通実績となっている。

しかし最初のイメージが払拭しがたく、常に水揚げがテーマのように語られるが、3月も過ぎればガクが固まったクリスマスローズは水下がりの心配はかなりなくなる。また、昨今流通本数が多い品種に「マグニフィセントベル」というものがあるが、これなどはむしろ日持ちが良い。

クリスマスローズは、海外からの輸入切り花もあるが防疫統計から推測すると、年間数千本レベルの輸入本数になる。国産の流通本数が推計で50〜100万本あると見ているので圧倒的に国産優位な商品だ。

ナチュラルトレンドが順調に定着しているし、栽培における環境負荷やエネルギー投下も他品目よりも比較的少ないことから、SDGsトレンドにマッチしていると思われる。まだまだ順調に取り扱いを増やすことができるだろう。

著者プロフィール

桐生 進(きりゅう・すすむ)
株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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