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【関東 鉢物】ハーデンベルギア

公開日:2023.2.2
(画像/photolibrary(https://www.photolibrary.jp/))

ハーデンベルギアはオーストラリアが原産で、現時点では主に鉢物でのみ流通している。マメ科の匍匐(ほふく)性(つる性)の植物で、つるは2m程まで伸びるそうだ。葉は鳥の羽根のような形で小型の花を房状にいくつもつける。花の色は藤色、白色、ピンク色とある。

最近の鉢物・切り花における流行からすると、ハーデンベルギアはトレンドの要素を複数持つ商品であると言える。

当社では、花きの流行の中心にナチュラルというワードを置き、そのナチュラルを支えるサブキーワードを

1 たおやかライン
2 バーティカルライン
3 ドライな質感
4 青みグレーイッシュ
5 くすみカラー
6 原種の雰囲気
7 ミニパーツ

という7つに選定している。

ナチュラル志向は2013年頃から花き業界に現れていた。そこにコロナ禍でのストレスフルな環境が自然な造形物の需要を加速拡大したと流行分析している。その流行を示すのが前述の7つのキーワードだ。このような背景をもとに、オーストラリアや南半球原産の植物の人気は高まっている。その場合、どちらかと言うとカサカサした感じや野趣あふれるような印象を持つ商品がオージープランツへの印象であった。

一方、ハーデンベルギアのトレンド要素は異なる。たおやかライン、青みグレーイッシュなどが見て取れる。とくに色合いは重要で、ここ数年の青み需要はますます高まるばかりではないだろうか。藤色、白色、ピンク色という花の色のうちピンク系の品種があるが、青みがかっているのだ。

また、つるのようにするすると伸びた茎と細身の葉はたおやかさが感じられてとても良い。出荷されている状態は行灯(あんどん)仕立てが多いが、屋内で飾る人はだいたい行灯の支柱からほどいているのではないだろうかと思う。この植物の魅力はこのつるが無造作に垂れ下がる感じにあるからだ。葉が細身のため、垂らして飾ってみると背面全面を葉で覆うほどではなく、背景が透けるぐらいのちょうど良さなのだ。そして青みがかった花の穂が縦ラインで差し込まれた感じ(バーティカルライン)になる。まったくもって花きのトレンドそのものだろうと思われる。このように、ハーデンベルギアは草姿全体に魅力が詰まっている商品である。

原稿を書く過程でハーデンベルギアの品種紹介をしているオーストラリアのサイトを調べてみた。すると、品種の特徴は花をメインにした内容であり、草姿や葉の形までに言及していないようである。より細く、笹の葉のような品種があるとシャープなカスケードな感じが強調されるものと思われ、切り花用途にカットしてもアクセントのある葉物として今時のデザインにそぐう素材となるだろう。

屋外での植栽はやや低温に不安があるため場所を選ぶようだ。とは言え、都内における散歩では見かけることがしばしあり、皆さんもよく目にしていると思う。トレンドだな、という目で今度は見ていただけたらと思い、今回本稿で取り上げてみた。

著者プロフィール

桐生 進(きりゅう・すすむ)
株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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