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コウモリを忌避する習性に注目して、害虫のヤガの飛来を防ぐ技術を開発

公開日:2023.2.27

ガ類の食害を受けると、農作物の商品価値が著しく低下してしまうため、安定して質の高い農産物を出荷するにはガ類の食害を確実に防除することが求められます。しかし、農薬を敬遠する消費者意識を考慮すると、農薬に頼った防除はできるだけ控えなければなりません。そこで農研機構、株式会社メムス・コア、京都府農林水産技術センターの共同研究グループは、蛾類が嫌がる超音波を用いた防除法を開発しました。

イラスト/坂木浩子

ヤガ類(ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウ、ツマジロクサヨトウ)は翅の付け根に音を感じる耳(鼓膜器官)を持っており、天敵のコウモリがエサを見つけるために発する超音波を聞き分けることができます。この生態に注目した研究グループはガ類が共通して嫌がる超音波を、ヤガ類の行動や聴覚神経の反応パターンから割り出しました。

明らかになったヤガ類が嫌がる超音波を発する装置を、イチゴの栽培施設、長ネギの露地圃場に設置して、ヤガ類の飛来数、幼虫のよる食害の発生を調べたところ、超音波の照射によってヤガ類の飛来数が減少し、幼虫の食害も抑えられることが確認されました。さらに果菜類や果樹などに被害をもたらすオオタバコガや吸ガ類でも防除効果を示すかどうかを確かめる実証試験も始まっており、近い将来、超音波発生装置を様々な蛾類の防除に利用できるようになると期待されています。

文/斉藤勝司

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