HOME 読みもの アグリニュース 接ぎ木を改良する知見になる? 植物の切断面を再接着する仕組みを解明 アグリニュース 接ぎ木を改良する知見になる? 植物の切断面を再接着する仕組みを解明 接ぎ木オーキシンWOX13 公開日:2023.2.27 植物は一部が切断されても、切断面どうしをつなげると元通りに再生します。これまでの研究で、切断の刺激で働くようになる遺伝子群(WIND1―4)が分化の進んだ細胞を初期化するとともに、さらにWIND1が発現を制御するWOX13が切断面でカルスの形成を促し、切断面の再接着に欠かせない因子であることも明らかになっていました。 イラスト/坂木浩子 しかし、植物ホルモンが再接着にどのように関わっているかは明らかになっていなかったため、奈良先端科学技術大学院大学、新潟大学、帝京大学、理化学研究所の研究グループは植物ホルモンの関与を解明する研究に取り組みました。モデル植物のシロイヌナズの葉と枝をつなぐ葉柄を切断したところ、2つの切断面のうち葉側の切断上部では活発にカルスが形成されるのに対して、茎側の切断下部ではカルスが大きくなりませんでした。 この原因を解明するに当たって、研究グループは植物ホルモンのオーキシンが葉から基部に向かって運ばれることに注目。オーキシンが存在するとカルスが大きく形成され、存在しないとカルスの形成が抑えられること考えました。この考えの下、切断面双方の組織でオーキシン量を測定して、オーキシンがあるとカルスは大きく形成され、ないとカルスの形成が抑えられることが明らかになりました。さらにWOX13の関与を調べ、オーキシンの蓄積によってWOX13の発現が活性化されて、切断面の再接着が促されるのだと考えられました。 この成果はシロイヌナズナを使った研究によって得られたものですが、切断面の再接着に関わるメカニズムですから、今後、農業生産において重要な技術になっている接ぎ木を改良する知見になるでしょう。 文/斉藤勝司 この記事をシェア 関連記事 2023.3.18 第38回 花卉懇談会フォーラム 「不透明な時代に考える 地域からの発信」 去る2月18日、東京農業大学世田谷キャンパスにて表題のフォーラムが開催された。ロ […] 花卉セミナー花卉懇談会コミュニティガーデン宿根草 2023.3.10 不耕起農業、カバークロップの栽培で土壌への炭素貯留を向上できる 地球温暖化対策一環として、土壌への炭素の貯留を促すことを目的に、圃場を耕さずに作 […] 不耕起二酸化炭素カバークロップ 2023.3.3 花弁の構造色に新発見!! 表面のクチクラにヒミツあり 花の色には送粉者を誘う働きがあります。花色を生みだすのは色素と構造色です。構造色 […] 花弁ギンセンカ構造色クチクラ