農耕と園藝 online カルチべ

生産から流通まで、
農家によりそうWEBサイト

お役立ちリンク集~カルチペディア~
アグリニュース

畑で半導体材料を生産する時代がくる?  植物由来のセルロース繊維に半導体の特性があることを発見

公開日:2023.3.24

植物に含まれるセルロースをナノメートルサイズ(1ナノメートルは10億分の1メートル)の微細な繊維に加工したセルロースナノファイバー(CNF)は、軽量ながら鋼鉄の約5倍もの強度を持つなどの優れた特徴から次世代材料として期待されています。大気中の二酸化炭素を吸収して育った植物を原料にしているだけに、焼却処理しても大気中の二酸化炭素濃度を増やすことはなく、環境にも優しい素材として注目されていますが、これまでの応用は機械分野、化学分野に限られていました。

イラスト/坂木浩子

東北大学の研究グループは、過去の研究で絶縁体のセルロースでもCNFに加工した上で成型することにより電子材料として利用できる可能性を示していました。そこで近年、木材に代わるパルプ原料として注目されている一年草のケナフ由来のセルロースから作りだしたナノファイバー(AKCF)を用いてシート材料を作製し、電子機器の材料としての特性を調べたところ、半導体の特性を持つことが明らかになりました。

この成果により、高価な高純度シリコンやレアメタルに代わって、安価なCNFが電子機器の原料に使える可能性が出てきました。ケナフは非木材紙の原料として栽培されるようになっていますし、日本に豊富に存在する森林資源も活用することも可能です。植物由来の半導体を利用した電子機器の実用化が期待されており、将来、半導体の原料を畑で生産する時代がやってくるかもしれません。

文/斉藤勝司

この記事をシェア