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新たな「緑の革命」遺伝子を発見!!  干ばつに強いコムギ品種の開発に期待

公開日:2023.4.7

農業革命の1つとされる、1960年代の「緑の革命」により、世界の穀物の生産量は劇的に増加しました。とくに草丈を低くする「緑の革命」遺伝子によって、コムギの収量は大きく増えました。草丈の低いコムギには、茎が短くなった分だけ、種子生産により多くのエネルギーを投資する傾向があり、さらに風雨などで倒れにくく、種子を収穫しやすいといった特徴があります。

ところが、従来の「緑の革命」遺伝子には、苗の成長が悪いという課題もありました。乾燥した畑で、水分を確保するために種子を地中深くに埋めると、土壌の表面まで苗が到達しないことがあるのです。

イラスト/坂木浩子

このほど、英国ジョン・イネス・センターを中心とする研究グループは、コムギの草丈を低くする新たな「緑の革命」遺伝子を発見しました。この研究成果は『PNAS』誌に掲載されています。

この研究では、草丈に関わる遺伝子が網羅的に探索されました。その結果、コムギの草丈を抑える新しい遺伝子Rht13が発見されました。

従来の「緑の革命」遺伝子(Rht-B1bおよびRht-D1b)では、ジベレリンという植物ホルモンの働きが妨げられて、草丈が低くくなります。その結果、コムギの全体的な成長にも影響が現れ、苗の成長が悪くなるので、種子を深く埋めるとうまく育たないことがあるわけです。

それに対して、今回発見されたRht13遺伝子は、コムギの茎上部の組織で作用して草丈を低くくしますが、苗は野生型コムギと同じように成長します。このため地中深くに種子を埋めても成長するというわけです。

今回の成果は、干ばつに強いコムギの開発につながると期待されます。それは世界のコムギ生産のさらなる向上につながる可能性があります。

文/保谷彰彦

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