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花弁の構造色に新発見!!  表面のクチクラにヒミツあり

公開日:2023.3.3 更新日: 2023.2.24

花の色には送粉者を誘う働きがあります。花色を生みだすのは色素と構造色です。構造色は、タマムシの翅、コンパクトディスクの表面などに加えて、花でも知られています。花の構造色は花弁表面の微細な筋状の構造による光の干渉で生じます。

花の構造色には、ハチ類を誘引する働きがあるため、作物の花に応用できれば、受粉の効率的が向上すると期待されています。ところが、花の色素の研究が進む一方で、花の構造色については、どのようなプロセスで生じるのか、まだよくわかっていません。

このほど、ケンブリッジ大学(イギリス)を中心とする研究グループは、花弁の構造色が生じるには、花弁表面のクチクラという薄い膜の化学的性質が重要であることを明らかにしました。この研究成果は『Current Biology』誌に掲載されています。

イラスト/坂木浩子

着目したのは、ハイビスカスの仲間であるギンセンカです。この植物は花弁に色素の部分と構造色の部分があり、花の構造色の研究で注目されています。

まず、花びらの成長を観察したところ、細胞が伸長するとクチクラに、構造色を生みだす「筋状の微細な構造」が現れました。このことから、構造色には細胞の成長が重要であることがわかりました。

次に、花弁表面の特定の位置で、その成分を分析しました。その結果、構造色の部分と色素の部分では、クチクラの化学的性質が異なることがわかったのです。構造色のクチクラ部分には、ジヒドロキシパルミチン酸やワックスがなど多く含まれますが、フェノール化合物は少ないことなどがわかりました。

この研究で、花弁の構造色が生みだされるうえで、花弁表面のクチクラの成分や量が正確に制御されていることがわかりました。今後、作物への応用につながると期待されます。

文/保谷彰彦

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