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【関東 切り花】コチョウラン

公開日:2023.3.16
(画像/photolibrary(https://www.photolibrary.jp/))

 

コチョウランと言えば、お祝いの場に届けられる鉢物商品のイメージが先行するだろう。一方で、切り花のコチョウランも鉢物に引けを取らぬほど人気が高い。

鉢物と同様に、花の色は白で大輪系、大型の花が縦に連なって咲いたものが主な商品タイプである。利用は多岐にわたり、葬儀・婚礼その他様々な装飾、パーソナルギフトなどの個人需要に利用されている。

大田花きにおけるコチョウランの年間取り扱い実績をグラフにした。

 

流通商品を品種別に分類すると、75〜80%は白の大輪系品種となる。残り20%は小輪系の多種多様な集まりとなる。8:2に分布が分かれる、いわゆるパレートの法則に従っている構成だ。8割を占める白の大輪系は海外からの輸入が多い。海外産はコチョウラン切り花全体の約6割を占め、そのほとんどが白の大輪系だ。一方で国産は、白の大輪系もあれば小輪系もあり、バラエティに富んでいる。小輪系は色合いも様々で、大きさも手頃なことから、家庭用にも利用される。

昨今の花の流行はコチョウランにも反映されている。婚礼需要では、白一辺倒のトレンドではない。社会全体で、くすみカラーの人気が高まったことで、コチョウランにおいてもくすんだようなピンク・オレンジの引き合いがある。水彩画のような中間的で定まらない色合いのコチョウラン品種の人気がある。

国産がメインとなる小輪系については、まだまだ細分化されたままでメガヒットが出ていないようだ。多様性に面白さがあるというところだろう。コチョウランがブーケに加わることで商品全体のグレード感は高まるし、実際、日持ち性が大変優れているので、その長期鑑賞性に満足していただけるだろう。ホームユースが拡大している昨今においては、じわじわと評価が高まっている理由でもありそうだ。ただし、前述のように人気品種でも出回り数量が少ないだろうから悩ましいところだ。

最後に、トレンドの草姿を体現した商品があるので紹介したい。「なごり雪」という小輪で花が数多くつき、茎がしなやかに伸びる品種だ。すらりとした草姿は、切り花業界で流行っているタラスピ(ペンペングサ)やグラミネ(イネ科の観賞用植物の総称)のフォルムと同様だ。すらりと茎を伸ばしたコチョウラン切り花の流通本数シェアはまだまだ低い。同様の草姿を持つコチョウラン切り花が増加することが期待される。

 

著者プロフィール

桐生 進(きりゅう・すすむ)
株式会社大田花き商品開発部を経て2009年から花の生活研究所所長。
花きのトレンド、物流効率化など幅広い分野を研究。
毎年、花き業界のマーケティング資料であるフラワービジネスノートを制作し発売している。

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