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さび病菌を抑えるRNAベースのスプレーを開発!!

公開日:2023.4.28

さび病菌は、野生植物や作物における多様な植物病原菌の一群です。厄介なさび病菌は、在来植物の多様性を脅かし、作物の収量を低下させる原因となっています。現在、作物のさび病は、主にさび病菌に対する殺菌剤の開発や、さび病菌に抵抗性のある作物品種の育種にって管理されています。しかし、殺菌剤はハチ、チョウなどの有益な生物に対して有害であったり、病原菌が殺菌剤に対して耐性を持つようになったりします。そこで、作物や野生植物、自然生態系を視野にいれた、新たな防除方法の開発に期待が寄せられています。

イラスト/坂木浩子

このほど、クイーンズランド大学(オーストラリア)などの研究グループは、さび病菌の感染を抑えるRNAベースのスプレーを開発しました。このスプレーは、タンパク質の翻訳を停止させる「RNA干渉」という現象を誘発します。

近年、外因性の二本鎖RNAによるRNA干渉が、ウイルス、昆虫、および真菌病原体に対して有効であることが確認されています。今回の研究では、二本鎖RNAを作成して、2種のさび病菌に対して、試験管内および植物体での作用メカニズムと、その効果が調べられました。

その結果、外因性の二本鎖RNAは、さび病菌の胞子内に取り込まれて、胞子の発芽を抑え、感染を阻害することが明らかとなりました。また、1年生の樹木に二本鎖RNAを散布したところ、さび病菌の症状が軽減されました。

さらに、さび病菌のゲノムを解読し、合計8科15種について、RNA干渉に利用できる主要遺伝子を同定しました。これらの知見は、外因性の二本鎖RNAが、農業の現場や自然生態系でのさび病菌の管理に役立つと期待されます。
環境に優しいRNAスプレーには、大きな可能性が秘められているようです。

文/保谷彰彦

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